第364話 今日から水だ!イーロンの異論

クボタがバイトから帰ってきたとき、いつもの彼とは少し違っていた。汗を拭きながら、「なあ、みんな…俺たちの地球って、こんなんで本当にいいのか?」と突然無秩序な問いを投げかけた。スタジオは一瞬静まり返り、ダイラは羊羹を口にしながら首をかしげる。クワヤマダくんは座禅を組んだまま、無言でクボタを見つめている。平さんは、キングギドラの着ぐるみを脱ぎかけてコーラを一気に飲み干した。


クボタは息を整え、ゆっくりと語り始めた。「考えてみろよ…俺たちの体の80%は水分でできているんだぜ?つまり、俺たちって、人間じゃなくて実はただの“水”なんじゃないかって思うんだ…今日から俺は、水だ!いや、俺はもう『クボタすい』として生きる!」


その瞬間、誰もが何かを言いたげな表情になったが、突如、異次元からの救いが現れた。スタジオのドアが大きな音を立てて開き、現れたのは――なんと、家政愛好家イーロン・マスクだった。スタジオの誰もが目を丸くして彼を見つめる。彼は冷静に歩み寄り、クボタの主張に異論を唱えた。


「クボタ、君の意見は面白い。しかし、我々は単なる水ではない。もっと言えば、我々こそが本当の宇宙人なんだよ。」イーロンはそう言い放ち、スタジオ内の一同は一気に彼の話に引き込まれる。「人類が宇宙人の存在を問い続けるが、実は我々こそが宇宙からの産物なんだ。しかも、君の言う『水』、それはホログラムに過ぎない。私たちの存在は、ただの情報の一部に過ぎないんだ。」


この爆弾発言に、スタジオのメンバーは完全に沈黙。クワヤマダくんは軽く転がった。ダイラは羊羹を噛みしめ、深く考え込むような表情を浮かべた。そして、スタジオの片隅にいた平さんがついに口を開いた。「つまり、俺たちは“水”でもあり、同時にホログラムってことか?なんか、SFって感じだな。」


その場で、彫刻学科の残念な哲学対話が開幕した。クボタはイーロンの異論に感銘を受け、「俺たち、つまりクボタすいは、宇宙人かつホログラムでもあるってことか?」とさっきも言った同じ疑問を投げかけた。平さんはいつものように、「彫刻も一種のホログラムなのかもしれないな」と呟きながら、自分の怪獣遊びに戻っていった。スボイと寺村は、寝たふりをしているが、明らかに耳を立ててこの異常な会話を楽しんでいる様子のように思えたが熟睡していた。


そこに登場したのが、かつて美大で「空ネイル遊ぶ」という独自のスタイルを確立していたギャル風の学生、ミユキ。彼女はスナップを決めつつ、「みんな、悟りって結局『空』に帰ることよ。だから私、ネイルをいじりながらその空を感じてるの。何もないことにこそ、本当の意味があるのよ。」と涼しい顔で発言する。彼女はスタジオの一角でネイルをいじりながら、空の概念を悟っていたのだ。


「それ、もしかして唯識哲学じゃないか?」クワヤマダくんが、彼女の言葉に反応して言う。「感じる心が世界のあり様を決めている…つまり、好き嫌い、綺麗とか汚いって価値観は全て幻に過ぎないんだ。俺たちが羊羹を美味しいと思うのも、結局は心がそう決めているだけで、本質的には何もないんだよな。」


イーロンは頷き、「まさにその通り。だから私たちは宇宙でも水でもホログラムでもいいんだ。ただ、意識がそれをどう受け取るか、それが全てだ。ダイラ物語がスゲー面白いと感じてしまう心も幻なんだ」と続けた。


結局、クボタの「俺は水だ!」という宣言から始まった哲学対話は、ホログラム、宇宙、唯識哲学、そしてネイルに至るまで、謎めいた方向へ進んでいった。彼らの会話は一見カオスだが、どこか心地よい秩序が生まれつつあった。


そして、ダイラは最後に微笑んで、「つまり、俺たちは何でもありってことだな。アートも人生も、自由に作っていこうじゃないか。幻でもなんでもいいじゃないか。それが宇宙人に与えられたパラダイスなのだから。」と羊羹をもう一口かじった。


次回、スタジオに新たな波乱が巻き起こる!?

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