第360話 あいぽん誕生秘話

モガミの低く深い声が、部屋の空気をさらに重くした。「本当のクリエイティブって何だろうな…」彼は静かに語り始めた。「自己表現って言ってるけど、実際はどうだ?彫刻学科の連中、あれだけ高い授業料払って、大学の備品を無駄にしてゴミを量産してる。そいつらは本当にクリエイティブか?」


その問いかけに、一同は静まり返った。クワヤマダくんも例外ではなかった。彼は、手足がついたことで「これで普通になれた」と安心していた自分を振り返り、モガミの言葉が胸に刺さった。「何か大事なものを見失っていたんだ」と気づいた。


モガミは続けた。「あそこにいる学生を見てみろ。昼は授業、夜はバイト、稼いだ金でまたゴミを作る。それがクリエイティブなのか?逆に、何もしないで空を見上げてる学生のほうが、新しい創造を生み出すかもしれない。どちらが未来のクリエイティブをリードするんだ?」


クワヤマダくんはその言葉に突き動かされ、静かに自分の手足を外し始めた。「形に囚われちゃいけないんだ…」と、自分に言い聞かせるように。再び「顔だけ」の姿に戻った彼は、静かに瞑想を始めた。


その姿を見ていたクボタは目を見開き、突然叫んだ。「クワヤマダくんが、モノホンの達磨になった!」その叫びに、無気力な風寺村が一瞬目を覚ましたが、再び眠りに戻った。興奮したクボタは「達磨だ!本物の達磨だ!」と部屋を駆け回ったが、誰も彼の興奮には付き合わなかった。


しかし、静かに見守っていた平さんは頷いた。「クワヤマダくん、やっと気づいたんだな。外見じゃなくて、内側から湧き出る力こそが本物だってことを。」


そんな中、スティーブ・ジョブズがインドから帰国し、ふいに部屋に現れた。彼もまたクリエイティブの本質を求めて瞑想を重ねていた。そして無言でクワヤマダくんの隣に座り、共に坐禅を組んだ。


しばらくして二人は、まるで合図でもしたかのように呟き始めた。「愛の本質…」その呟きが次第にスピードを増し、いつしか「アイのホンシツ…アイポン…あいぽん…」と変わっていった。部屋の者たちはそれに気づき、「もしかしてこれがiPhoneのクリエイティブの瞬間なのか?」とささやき始めた。


次々と周りの人々も坐禅を組み、「あいぽん…あいぽん…」と連呼し始めた。その奇妙なリズムが部屋中に満ち、全員が新たなクリエイティブの中心にいるような感覚が広がった。


平さんは静かに呟いた。「これは、ただの瞑想じゃない。時代が変わる瞬間だ。」ダイラも頷き、彼ら全員が新たなクリエイティブの扉を開こうとしていた。


次回予告

クワヤマダくんとジョブズが生み出すiPhone、その先には何が待っているのか?

次回、「達磨と天才たちのクリエイティブ革命」

乞うご期待!

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