第358話 塀の中の懲りないモンスター
モガミがスボイに喝を入れると、スボイは目の色を変え、瞬く間に恐ろしいモンスター風へと変貌した。詰所の空気は一変し、全員がその威圧感に圧倒されていた。
「な、なんだこのプレッシャー…」とクワヤマダくんが震え声で呟く。「俺のボディーどころじゃねぇ!」
突然、スボイが鼻息を吹き出し、その強風でクボタが遠くへ吹き飛ばされていく。「うわぁぁぁ!」とクボタの叫びが空に響く中、彼の姿は一瞬で見えなくなった。
「クボタァァァ!あれは俺のボディーだぞ!」とクワヤマダくんは叫びながら、クボタを探すべくその場を飛び出していった。
その場に残されたのはモガミ、平さん、そしてダイラ。モガミは腕を組み、「スボイの暴走を止めるには、フュージョンするしかねぇ!」と決断した。
「やるしかないな!」と平さんとダイラも覚悟を決め、三人で奇妙な動きをしながらフュージョンを試みた。光が彼らを包み込み、新たな姿が現れる…はずだった。
しかし、モンスターの目の前に立っていたのは、予想外にも「無気力風寺村」という、全くやる気のない姿に変わってしまっていた。戦闘力はおろか、動く気力すら感じられない。
「なんでこうなった…?」と平さんが呆然とし、モガミは肩をすくめ「オラ、力が…出ねえ…」と、目を半開きにしながら呟いた。
スボイはそんな無気力風寺村をじっと見つめ、キョトンとした表情を浮かべた後、無気力風寺村をひょいっと摘まみ上げ、そのまま口の中に放り込んだ。「ゴリゴリ…」と噛み砕く音が響く。
しかし、スボイの顔が急に歪む。「マズ…!」とスボイは苦々しい顔をして寺村を吐き出した。ばらばらになった寺村の破片が地面に散らばる。
「うわぁ、これはひどい…」ADのかわぐちは、あきれた顔で寺村の残骸を見つめ、仕方なく箒を手に片付けを始めた。
寺村がばらばらになり、ADかわぐちが箒で片付けている最中、突然、寺村の残骸から薄い光が漏れ始めた。光が次第に強くなり、その中から何かが浮かび上がってくる。かわぐちは、箒を持ったまま唖然と立ち尽くした。
「また何か始まったよ…」と呆れた顔でつぶやくかわぐち。彼の目の前で、寺村の破片から次々に神々しい姿の者たちが現れた。金色のオーラをまとい、古事記の世界から抜け出てきたかのような神々が神秘的な雰囲気を放っていた。
だが、神々の顔を見た瞬間、場の空気が一変する。なんと、すべての神々の顔がクワヤマダくんそのものだったのだ。神々の美しい衣装やオーラにもかかわらず、全員がクワヤマダくんの顔をしているという謎の状況に、全員の心がざわつき始めた。
「え…ちょ、これ…全員クワヤマダくん?ありがたいようなありがたくないような微妙な感情は何?」とモガミが思わず声を漏らす。ダイラも驚きながら「何だこの状況、意味が分からん…でもおもろい。」と困惑する。
「どうなってるんだ?」と平さんがさらに混乱しながら、クワヤマダくん自身は、遠くからその神々を見つめていた。
「俺の顔…なんで…」とクワヤマダくんが震えた声で呟く。神々の一人が厳かに剣を掲げると、その動作すらクワヤマダくんのレスラーパフォーマンス風の仕草が反映されている。さらに周囲の光景が古代日本の神話のように変わり、もはや現実のものとは思えない雰囲気が漂い始めた。
しかし、かわぐちは腕を組みながら頭を掻き、「いや、これはどう見ても古事記風だけど…顔が全部クワヤマダくんって、やばいだろ。何の冗談だ?」と呆れた様子で神々を見上げていた。
神々が次々と謎めいた言葉を発しようとするが、すべてがクワヤマダくんの顔と声であり、まるで真剣さが感じられない。周りの連中は全員、どうしていいか分からずその場で立ち尽くしていた。
「これ、どう片付ければいいんだ…」とかわぐちが再び溜息をつきながら、箒を握りしめていた。
次回予告
クワヤマダくんの顔をした神々が溢れ出し、古事記のような世界に突入した一行は、この謎の状況をどう打破するのか?次回、「クワヤマダ神、ボディー探しと神々との対峙!クワヤマダくんの顔を持つ神の力とは?」
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