第357話 異端のモンスター

ハリウッドの詰所で、モガミ、平さん、クワヤマダくん、ダイラの四人が雑談していた。話題はふと、古事記の世界に移り、奇想天外なエピソードにみんな夢中になっていた。


「いや、古事記ってさ、めちゃくちゃだよな!」と平さんが興奮しながら言う。「イザナギが黄泉の国で死んだイザナミを追いかけて、顔を見たら腐りかけてて、蛆がうじゃうじゃ。それを見てイザナギは逃げ出して、追っかけられたんだぜ!まるでホラー映画じゃん!」


「しかもその後、イザナギは汚れを清めるために禊をするんだけど、そのとき鼻をすすいだらスサノオが生まれて、目を洗ったらアマテラスが出てきたって話だろ?鼻水から神が生まれるなんて、どこの異世界設定だよ!」とモガミが笑いながら続ける。


「それって、『お伽草子』の一寸法師とも似てるよな」とクワヤマダくんが口を挟んだ。「一寸法師なんて、小さすぎて茶碗の中に入って旅してたんだぜ!しかも、針を刀にして鬼と戦うとか、普通に考えてありえない。なんで鬼はその小さな針でやられるんだよって話だけど、そういうところが最高に面白いんだよね」


ダイラも感心したように頷き、「そうだよね。実際、ヤマタノオロチも八つの頭を持つ大蛇だし、あれって完全に怪獣じゃん。スサノオが酒を飲ませて眠らせて倒すとか、まるで古代のモンスターハンターだよ」と冗談を交えながら語った。


「それだけじゃないぞ」と平さんがさらに乗り気になって話を続ける。「タケミナカタの話もすごいよ。あいつ、力比べで相手の腕をもぎ取って勝つんだぜ!しかも、相手は神だぞ。もはやプロレスも古事記にはかなわないな」


そんなやり取りをしているうちに、ダイラはふと何かを思い出したように声をあげた。「そうだ、俺たちの話って、こういう摩訶不思議な古事記やお伽草子からめっちゃ影響受けてるんじゃないか?最近のエピソードも、よく考えたらかなりクレイジーだよ」


「確かに!」とクワヤマダくんが同意し、「俺たちの世界観って、もう完全に超現実だよ。まるでダリの絵画みたいに現実と幻想がごちゃ混ぜになってる。縄文時代の土器もそうだし、岡本太郎が再発見した縄文のビーナスなんて、どう見ても未来の彫刻じゃん!」


その瞬間、平さんが急に真剣な顔で言い出した。「でも、俺たちがもうひとつ突き抜けたら、とんでもない表現が生まれるはずだ。そう思わないか?」モガミ、クワヤマダくん、そしてダイラも、一瞬静かに考え込んだ。


モガミは、「日本のクリエイターの祖先は人にも自然にも境界がなかったんじゃ。だからこその古事記や御伽草子。八百万の神、全ての物に神が宿る。だからこそ、万物に慈しみをもつのじゃ」と戦いにあけくれる三人を諭した。


その時、詰所の扉がギィッと音を立てて開き、突然キアヌ・リーブスが現れた。「Excuse me, is this the line for autographs?」彼の登場に、四人は一斉に凍り付いた。


モガミが「ちょ、ちょっと待って、これって古事記に出てくる神様じゃないよね?」と震え声で言うと、平さんが冷静に「いや、これは現代の神だ。俺たち、今度はハリウッドで神話を作る番かもな」と笑顔で返した。


「キアヌが現れたってことは、俺たちもいよいよ世界進出だな!」とクワヤマダくんがゴジラの顔で叫ぶ。平さんがすぐさまキアヌの方を向いて「俺たちの新しい伝説をサインで祝ってくれよ!」と突き出したノートにキアヌが苦笑しながらペンを走らせる。


「え、キアヌ・リーブス!?」とモガミがスマホをかざし、TikTok用に撮影を始めた。しかし、クワヤマダくんは何かがおかしいと感じていた。「いや、ちょっと待てよ…これ、本物か?」


クワヤマダくんがじっくり観察すると、どうやらキアヌの顔は若干ズレて見える。そして、急にキアヌのマスクが外れ、現れたのは…クボタだった!


「なんでクボタがキアヌのマスクを被ってんだよ!」とクワヤマダくんが叫ぶが、クボタはキョトンとして、「だって、TikTokでバズりたかったんだもん」と無邪気に答える。モガミはこれにブチ切れてスマホを投げ捨て、「スボイ!来い!」と叫び、場の空気は一気にピリついた。


その間、クワヤマダくんは俺のボディーを返せと興奮する。しかし、顔だけのクワヤマダくんは胴体を引っ張る方法がない。「どうすりゃいいんだ…」


クボタはクワヤマダくんの視線に気付かず、またも鼻の穴を広げて悦に浸っていた。


次回予告


モガミの怒りが頂点に達し、スボイとクボタの間に緊張が走る。クワヤマダくんのボディーを取り戻すべく、平さんはある奇策を思いつく!そしてダイラは、ついに伝説のキングギドラを召喚!?次回、「体をめぐる攻防戦、怪獣たちの決闘が始まる!」お楽しみに!

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