第356話 モガミのモミアゲチャレンジ
クワヤマダくんがキングコングに扮したクボタを凝視していると、ふと目に飛び込んできたのは、ぐにょぐにょ動くクボタのモミアゲだった。あれは…まさか!モミアゲの先には、あの巨匠モガミがぶら下がっているではないか!
「え、ちょっと待って…モガミがモミアゲでモガいてる!」平さんが驚愕の声を上げる。クワヤマダくんも目を見開いて凍り付いた。もしこのまま炎をクボタに吹きかけたら、モガミが焼かれてしまう!一刻も早く作戦を変更しなければならなかった。
クワヤマダくんは、急いで自分の爪を丸くし、優しくクボタのモミアゲをつまんだ。「これでモガミを助けられるかもしれない!」と心の中で決意する。すると、クボタは鼻の穴を広げ、思わず悦にひたっている様子だった。まさにその瞬間、モガミはモミアゲの中からモガキながら自由になれるチャンスを得たのだ。
だが、ここで新たな試練が待ち受けていた。クボタが再びふんどしを締め、キングコングとしての見栄えを意識したパフォーマンスを始めた。ダイラはその一部始終を観察しながら、少し離れたところでたばこをふかしていたADのスボイに目を付けた。ダイラは瞬時にひらめき、「あいつを呼んでこよう!」と心に決めた。
スボイは、ダイラの声に反応し、タバコの煙をふかしながらゆっくりと近づいてきた。ダイラが声をかける。「おい、スボイ!やりっぱなしにするな!」とクボタに言ってくれ!
その言葉にスボイは反応しクボタのモミアゲの状況を見て驚愕した。「え、巨匠モガミがそこにいるの?よし!「クボタやりっぱなしにするな!」スボイの甲高い声にクボタはふと我に返った。
スボイは、クボタが正気になった瞬間をねらい「よし、モミアゲを優しくケアしよう。モガミを安全な場所に保護する手助けをするんだ!」その言葉を聞いて、クワヤマダくんも頷いた。
「スボイ、頼む!君の手を貸してくれ!」二人は協力して、クボタのモミアゲを優しく扱い、モガミを引き寄せることに成功した。モガミは、無事に救出された。クボタは再びキングコングと化した。
クワヤマダくんがモガミを引き寄せたその瞬間、全員がほっと胸を撫で下ろした。しかし、次の瞬間、モガミが突如として顔を真っ赤にして叫び出した。
「何やってんだよ!助けなんかいらないってば!」驚愕するクワヤマダくんや平さんの前で、モガミは腕を振り回し、勢いよく地面に飛び降りた。彼は苛立たしげにポケットからスマホを取り出し、モミアゲにぶら下がっている間ずっと撮影していたTikTokの動画を再生して見せつけた。
「見ろよ!これがバズり中の『モガミのモミアゲチャレンジ』だぞ!」モガミはスマホを皆の前に突き出し、画面には彼がモミアゲにぶら下がりながらカメラにウィンクしている動画が映し出されていた。
「お前ら、全然分かってねえな。これはルーツを辿る旅なんだよ。モミアゲにぶら下がって、どこまで耐えられるかを探ることで、人間の根源に近づくんだ。助けなんて、邪魔だっての!」モガミは逆ギレし、スボイに向かって指を突きつけた。「お前なんだよ、特に!何でやりっぱなしだとか、そんなくだらないこと言ってんだ!アートはデタラメ、奇想天外、摩訶不思議が命、先端の先を行くもんだ!」モガミは自分のモミアゲを揺さぶりながら叫んだ。
スボイは一瞬、言葉を失ったが、平さんが横で静かに口を開いた。「ほう、モミアゲでルーツを辿るか…それも一つの哲学だな。しかし、なぜ怒る?本当のルーツを探るには、自己と他者の境界を理解し、他者の手助けをどう受け入れるかも問われるべきだろう?」
「そうだ、そうだ!」クワヤマダくんも便乗する。「お前はTikTokでバズってるかもしれないけど、モミアゲチャレンジが人間存在の根源に関わるって言うなら、他人が手を差し伸べることだってその一部だろ?拒絶することで、逆にお前のルーツ探しは未完に終わるんじゃないのか?」
モガミは少し黙り込んだが、すぐに反論した。「いや、違うんだ。オレが言ってるのは、モガミがモミアゲにぶら下がることで、自分だけのルーツを辿る旅なんだ。他人に介入されると、その旅は意味を失うんだよ!」
スボイは、その言葉に眉をひそめた。「だけど、助け合いも人間のルーツだろ?一人で探すルーツが本当に意味があるのか?」
しばしの沈黙が漂う。誰もがその問いに、哲学的な思索を巡らせた。結局、モガミのモミアゲチャレンジとは何か。自己探求か、自己満足か。それとも、他者との関係性を無視した孤独な旅なのか?その問いが頭をよぎる。
そんな空気を打ち破るように、キングコング役を放置され退屈していたクボタがモミアゲを揉みながら言った。「オレ、あんまり難しいことは分からないけど、モミアゲでルーツを探るってなんかおかしい気がするな…モミアゲは単にモミアゲだろ?」
全員、クボタの言葉に静かに頷いた。そして、しばらくすると、モガミもその場を去り、モミアゲチャレンジの動画が大バズリしていることに満足して帰っていった。
ダイラが再び呟いた。「結局、ルーツって何だろうな…」そして、一同は笑いながら、その場を後にした。
次回予告
平さんとクワヤマダくんが、今度は未来のテクノロジーが詰まったサイバーパンクな東京へタイムスリップ!だが、そこには奇妙な建物がそびえ立ち、街中に謎の巨大なロボットが徘徊している。なんと、そのロボットはゴジラ型の最新型AI「クワゴジラ」と判明!しかし、AIが暴走を始め、街は大混乱。ダイラも巻き込まれ、クワヤマダくんの顔とAIゴジラが壮絶な戦いに!平さんは無事にこの未来都市を救うことができるのか?
次回、『クワゴジラ対平さん!AI都市の激闘』
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