第354話 画狂老人卍の奇策
イーロン・マスク・メロンの正体が次第に明らかになるにつれ、その不思議な老人が実は「画狂老人卍」――つまり、あの葛飾北斎であることが判明した。ダイラとクワヤマダくんは驚きのあまり口を開けたまま、しばらく言葉を失った。卍は90歳を超えても足腰が強く、噂では日本からアメリカまで歩いて渡ってきたと言われていた。アメリカの文化に深く浸透し、彼はスーパーマンの作画指導まで行っていたのだ。
「北斎さん、すごすぎる…」とクワヤマダくんが呟くが、その顔はどこかおかしい。実は、卍はハリウッドに出入りしながらゴジラ制作にも携わっており、ゴジラの背鰭に自身の代表作『神奈川沖浪裏』の波のモチーフを組み込むという実験をしていたのだった。
「ほら、見てみろ。俺の波をゴジラの背に乗せるって発想、すごいだろう?」卍は自信満々に笑う。「でもな、クワヤマダ、今日はお前がゴジラになる番だ。ゴジラの顔、ちょっとお前の顔に変えてみることにしたんだよ!」
クワヤマダくんはぎょっとした。「え、なんで俺がゴジラに!?」
しかし、それはもう既に遅かった。特撮の魔法にかかり、クワヤマダくんの顔はゴジラの頭に挿げ替えられていた。しかも、平さんが特殊照明でゴジラの口からファイヤーを出す演出を始め、すっかりハリウッドの大スペクタクルになっていた。
平さんはプロの腕前で照明を操り、ゴジラ(クワヤマダくん)は火を噴き、荒れ狂う怪獣としてセットを暴れ回った。周囲のスタッフや見物人たちは拍手喝采、「新しいゴジラの姿に皆が興奮し、セットはまるでハリウッドのゴジラ映画のような熱気に包まれた。クワヤマダくんは、自分がゴジラの顔に変わったことに気づくたびに「俺、どうしてこんなことになってんだよ!」と叫ぶが、誰も聞いてくれない。それどころか、北斎は背中を叩きながら、「いいじゃないか!これは新時代の芸術だ!お前がゴジラとしてデビューするんだ!」と大笑いしている。
その様子を横で見ていたダイラは、ゴジラ化したクワヤマダくんに感動していた。「クワヤマダくん、君の身体が今、伝説の怪獣になってるんだよ!これはリスペクトに値することだ…それに、北斎があの波をゴジラの背びれに取り入れるなんて、まさに奇跡だ!」
一方でクワヤマダくんは、火を噴きながら暴れ回るゴジラの身体に閉じ込められ、訳がわからないまま「誰か助けてくれよ!俺、ただの顔だぞ!」と叫んでいたが、やはりその叫びもゴジラの咆哮にかき消されてしまった。
そのとき、セットの奥から平さんが大きなマイクを持って駆け寄ってきた。「よーし、いいぞ、クワヤマダ!もっと吠えろ!次は火山のシーンだ!燃え尽きるほどの熱演を頼むぞ!」と、さらに過激な演出を提案してくる。
「火山って、俺まだ火を吐き続けるのかよ!?」クワヤマダくんはますます混乱しながらも、もう逃げ場がなかった。仕方なく、怪獣ゴジラとしての役割を果たし続けるしかないと腹をくくり、大暴れを続けた。
そんな混乱の最中、突然背後から静かに足音が聞こえた。誰も気づかぬうちに、ゴジラのセットの奥から現れたのは、またもや平さんであった。しかし、彼の隣には見覚えのある顔があった。「ダイラだ!」
ダイラは、ついに平さんを追いかけてニューヨークに戻ってきたのだ。だが、ダイラはすぐに状況を理解し、「クワヤマダくん…なんで君がゴジラに!?」と、今にも笑い出しそうな顔で近づいてきた。
「ダイラ!助けてくれ!もうこれ以上、火は吐きたくないんだ!口の中がいた〜い!」とクワヤマダくんは悲鳴を上げるが、ダイラは平然と答えた。「いや、これは最高だよ。地球の歴史に残る出来事になるかもしれない。君がこのままゴジラとして出演し続けるなら、僕も手伝おう。」
結局、ダイラもゴジラ(クワヤマダくん)をサポートすることに決め、彼らはハリウッドでゴジラ作品を次々と生み出すことになった。平さんとダイラのコンビは、特撮界で一世を風靡し、「ゴジラに新たな命を吹き込んだ男たち」として称賛されることとなった。
しかし、クワヤマダくんはいつか自分の身体を取り戻すことを願いながら、今日もゴジラとして火を吐き続けるのだった。
次回予告
クワヤマダくん、いよいよミラクルボディーを手に入れることに!お見逃しなく!
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