トラベラーダイラ
第351話 デュシャンのウォシュレット革命
時空の歪みに巻き込まれ、気がつけば、平さんとクワヤマダくんはまたもや見知らぬ部屋に放り込まれていた。薄暗い空間には、奇妙なオブジェやキャンバス、何やら意味不明な絵が散乱している。「またかよ、どこだここは!」とクワヤマダくんが不満げに言い、平さんは少し呆れたように「まあまあ、落ち着け。ここもなんかのアートスタジオっぽいな」と周囲を物色していた。
「ん?誰かいるぞ」と平さんが指さす先には、一人の男がトイレに潜んでいた。目が合うと、男はおそるおそる出てきた。なんと、その男はマルセル・デュシャンだったのだ。
デュシャンは焦った表情で二人を見つめ、「お前たちは…幻か?それとも未来から来た神か?それともただの泥棒?」と問いかけた。クワヤマダくんは「俺たちのことを神扱いかよ?時空の迷子だっつーの!」とツッコミを入れ、平さんは相変わらず冷静に「ただの旅人さ」と肩をすくめた。
デュシャンは深刻な顔で、「実は、俺はアートの世界をひっくり返したいとずっと思っているんだ。だが、どうやって過激な作品を世に出すべきか悩んでいて…」と打ち明けた。クワヤマダくんは鼻で笑いながら、「おいおい、そんな悩みでトイレに隠れるなんて、くだらねえな。しかもこんなべたな作品じゃ無理だね。」と一言。しかし、平さんは何かを思いついたように「それなら、クワヤマダくんを展示してみたらどうだ?」と提案した。
デュシャンは「クワヤマダくん?」と不思議そうに見つめる。クワヤマダくんが自信たっぷりに「そうだよ、顔だけの俺をアートとして展示すれば、みんな驚くぜ!」と胸は無いが胸を張った。
「顔だけ…だと?」デュシャンは驚愕しつつも、好奇心に満ちた表情で「それは…革命的かもしれない」と納得し、展示を決めた。
展示当日、クワヤマダくんは袋に詰められ、デュシャンとともにニューヨークの現代美術展へ向かった。だが、会場でクワヤマダくんは突然「あー!やばい、トイレ行きたい!」と叫び出した。急いでトイレに連れて行かれたものの、彼は顔しかないため便器に頭が挟まり、抜けなくなってしまう。
「おい、なんでまた便器にハマってんだよ!」とデュシャンが焦る中、クワヤマダくんは「どうしようもねえよ!俺の胴体どこいったんだよ!このウォシュレットが良かったのに!」と嘆く。仕方なく、デュシャンは便器ごと引き抜き展示することにした。
美術展の審査員が袋を開け、展示物を確認すると、そこにはただの便器しかない。クワヤマダくんは時空の歪みに飲まれ、またどこかへ消えてしまっていたのだ。審査員たちは一瞬固まったが、やがて一人が「これはアートか?ただの便器だわ!」と叫んだ。
デュシャンは苦笑しながらも、「まさかこれで成功するはずがないな。」と平さんと目を合わせ、肩をすくめた。
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その後、しばらくしてデュシャンの作品「泉(ファウンテン)」はアート界を震撼させることとなった。本来ならあるはずのないウォシュレット便器が泉のように水を吹き出し話題となった。クワヤマダくんは消えたままだ。平さんはクワヤマダくんが再びどこかの時空をさまよっていることに気づき、「あいつ、顔だけでどうやって排泄しようとしたんだ?おれはぼっとん便所派だけどな。」とにやけた。
【次回予告】
消えたクワヤマダくんを追え!次回は、ニューヨークの現代アートシーンに写楽が復活!?時空を超えた大冒険が、またしても巻き起こる!果たして、写楽とアンディ・ウォーホルがタッグを組むのか?次回、『ニューヨーク、現代アートの迷宮へ!』
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