第349話 ナスカの微妙絵
時空の歪みを超えた先、平さんとクワヤマダくんは、南米ナスカの乾いた平原に放り出された。目の前には無数の巨大な地上絵が広がり、二人はその圧倒的な景観に一瞬、息を呑んだ。
「ここって…ナスカの地上絵か?」クワヤマダくんが困惑しつつ、顔だけで見回す。
「おそらくそうだな。だが、ただの観光地に放り出されたわけじゃなさそうだぞ」と平さんは周囲を見渡しながら冷静に返した。
突如、現地の民族たちが現れ、二人を取り囲んだ。彼らは平さんとクワヤマダくんを神の使いと勘違いし、異様な儀式のように、二人に新たな地上絵を描かせることに決めた。逃げる間もなく、拷問に近い労働を強いられる羽目に陥った二人。
「平さん!俺、顔しかないのに地上絵とか無理だって!そもそも、この胴体を探してもらわないと!」クワヤマダくんがぐったりしながら抗議するも、平さんは妙に楽しげだ。
「まあまあ、クワヤマダ。みんなちがって、みんないいんだ。顔しかないお前も、この時代に放り込まれた俺も、全て意味があるんだよ」と、平さんはなぜか金子みすゞの言葉を引用しながら地面に線を引き始めた。
「え?金子みすゞまで持ち出して、何やってんだよ?」と、驚くクワヤマダくん。
平さんはニヤリと笑い、「これは未来へのメッセージだ」と言って、地面に大きく「へるぷみー」とひらがなで書き始めた。それを見たクワヤマダくんは、さすがに呆れ果てて言葉を失った。
「まさか、ひらがなで書いてどうするんだよ…絶対、誰も読めないって!」とクワヤマダくんが諦め気味に言うが、平さんは全く意に介さない。
クワヤマダくんもついに限界が来て、顔しかない体でへたり込む。しかし、顔だけが地面にベタッとくっつく形になり、その姿に平さんは笑いを堪えきれなかった。「おい、クワヤマダ、その姿、まるで地面に顔が貼り付いてるだけじゃないか。『へるぷみー』って、これ現代人が見たらただの微妙な落書きにしか見えないぞ!」
そして、数千年が経過し、現代のAIがナスカの地上絵を解析した結果、そこには「へるぷみー」と書かれた謎のメッセージが残されていた。しかし、考古学者たちはまさか日本語が書かれているとは思わず、かわいい顔が描かれているとしか認識されなかった。インターネット上では一時期だけ話題になったが、すぐに忘れ去られた。
「俺たちが残すものが、ただの落書きかよ…」とクワヤマダくんは思わず呟く。
「いや、これがアートなんだ。未来の誰かがいつか、これを意味のあるものだと解釈するだろう」と平さんは勝手に満足げな表情を浮かべていた。
そして再び、時空が揺れ始めた。二人は次なる未知の時代へと引きずり込まれていく――。
【次回予告】
クワヤマダくんと平さん、次なる時空の旅は現代ニューヨーク!超都市に集う数々の現代アーティストたちと、アートの頂点を競い合うことに!?果たして、二人は世界に衝撃を与えるアートを生み出すことができるのか?次回、『アートの戦場、ニューヨーク!』をお楽しみに!
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