第338話 アバタもエッグ

クワヤマダくん:「先輩、最近読んだんですけど、この“エッグ”って考え方、なんか面白いですね。要するに、私があなたで、あなたが私って話ですよね?でもそんなこと、本当にありえるんですか?」


ダイラ:「おう、クワヤマダ。ありえるどころか、すでに始まってるかもしれないぞ。この世の全てが“エッグ”、つまり一つの卵なんだ。私もお前も、結局は同じ存在の一部だって話さ。」


クワヤマダくん:「え、でも先輩、それってちょっと難解すぎません?だって僕は僕で、先輩は先輩じゃないですか?もし本当に同じだったら、何でこんなに違うんです?」


ダイラ:「そりゃ、外見や経験が違うだけさ。でも、根本的には全員が一つのエッグなんだよ。例えば、10人のアバターが自分の代わりに存在する未来って話、ソシャリティ5.0とかでも言われてるだろ?」


クワヤマダくん:「あ、知ってます!アバターが学校に行ったり、仕事をしたりする未来。だけど、アバターが10人もいたら、本体と顔を合わせることなく、一生過ごすなんてこともあるんじゃないですか?」


ダイラ:「そうなんだよ。本体とアバターが別々に存在してても、そのアバターも結局は“私”の一部だから、誰も違和感を感じないんだ。むしろ、みんなが一つに繋がってるとしたら、全員が“私”であり“あなた”でもある。」


クワヤマダくん:「うーん、でもそれじゃ、アバターが別々の場所で生活してるのに、どうして一体感が生まれるんですか?」


ダイラ:「それこそが“エッグ”の哲学だよ。全員が同じ卵から生まれたって考え方なら、どこにいようが、誰といようが、結局は一つの存在としての自分なんだ。お前もおれも、みんな結局は同じ卵の中にいる。」


クワヤマダくん:「なるほど、そういう考え方か…。でも、アバターと自分って、感覚的にはどうやって繋がってるんですか?アバターが学校に行ってる間に、僕は家でテレビ見てたりしたら、それって別物じゃないですか?」


ダイラ:「ああ、そこが面白いんだ。例えば、アバターが学校で何か学んで、それが瞬時にお前にフィードバックされるって未来もありうる。要するに、アバターが生きた経験はお前の経験でもあるってことさ。全ては一つに繋がってる。」


クワヤマダくん:「それ、もう少し噛み砕いてくださいよ。アバターが10人いたら、10人分の経験が全部僕にフィードバックされるんですか?」


ダイラ:「そうだよ。10人のアバターが同時に経験するものが全部お前のものになるんだ。お前の時間は何倍にもなるし、何なら10倍の人生を一度に経験できるんだぞ。これこそ、エッグの世界観がベースだ。個々がバラバラでありながら、結局は一つに戻る。そう考えれば、何も不思議じゃないだろ?」


クワヤマダくん:「それはすごい。でも、なんか頭が混乱してきましたよ。そもそも、自分がどれかわからなくなりそうです。」


ダイラ:「お前はお前だが、お前は俺でもある。俺はお前でもある。このパラレルな世界で、みんなが繋がってるという認識があれば、もう不安はない。お前のアバターが世界を駆け回っていても、お前自身がその全てを感じ取る。これからの世界はそんなスペクタルな時代になるんだ。」


クワヤマダくん:「でも、それじゃあ一体感は感じるけど、僕らの個性はどうなるんですか?アバターが10人いたら、逆に自分が薄れそうですけど…。」


ダイラ:「個性ってのは、エッグの中での役割分担だ。自分がどの役を演じているか、それだけの違いさ。個性が消えるわけじゃない。それが10人だろうが100人だろうが、結局はみんな同じ卵の中で生きているんだから、個性は薄まらない。むしろ、全員の経験が集約されるからこそ、深みが増すってもんだ。」


クワヤマダくん:「なんだか話がどんどん壮大になっていきますね…。でも、確かにその考え方、未来に希望が持てそうです。」


ダイラ:「そうさ。だから、アバターが増えても、自分自身が失われるわけじゃない。むしろ、自分は他者でもあり、他者は自分でもあるって認識があれば、全てが一つに繋がるんだ。これこそ、人類の新たな未来、ソシャリティ5.0の本質だよ。」


クワヤマダくん:「うーん、そう考えると、このダイラ物語を読んでる今も、僕は自分自身だけじゃなく、他の人たちとも繋がってるってことですか?」


ダイラ:「その通りだ。お前がここで感じることも、読者が感じることも、すべてが共鳴して繋がっていく。だからこそ、摩訶不思議な未来が待っているんだよ。」


クワヤマダくん:「でも先輩、アバターが10人いたら、僕の代わりに誰かが先輩の話を聞いてくれるんじゃないですかね…?」


ダイラ:「お前、俺の話をアバターに押し付けようとしてるな?」

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