第329話 TickTokerダイラ
クワヤマダくん「ダイラ先輩、昨日のギャラリートーク、やっぱり映画の話で盛り上がりましたね。」
ダイラ(笑いながら)「そうだな。昔、美大で講師をしていたときも、教え子に“先生、自分の作品を語る時間のほとんどが映画のレーザーディスクやチラシの話で終わってますよ”って指摘されたことがあったよ。25年経っても、そこは変わらないみたいだな。」
クワヤマダくん「青春期に観た映画が、今のダイラさんを作っているわけですから、それは仕方ないですよ。むしろ自然な流れじゃないですか?」
ダイラ「そうかもしれないな。でも、あんなに好きだった映画のチラシ収集も、2000年のバオバブプランテーションの個展をやって、自分の作品のチラシを見たら、急に止めたくなったんだよな。」
クワヤマダくん「確か、当時活動していたアーティストとの2本立てチラシで、満足したって言ってましたよね?」
ダイラ(懐かしそうに)「そうなんだ。実は昔から、映画の2本立てチラシに憧れてたんだよ。あれには特別な魔法があるんだ。今じゃ、2本立ての映画なんて想像もできないだろ?だから、自分がその2本立ての一部になれたことで、どこかで夢が叶ったんだって感じたんだろうな。」
クワヤマダくん「昨日のギャラリートークでも、西島さんがダイラさんに問いかけた瞬間、一瞬でダイラさんの“骨格”が透けて見えるような感じがしました。まるでレントゲンを見たように。」
ダイラ「西島さんに丸裸にされちゃった(笑)俺の99%は映画でできてる。結局、俺は映画の登場人物に過ぎないんだ。大型の作品も、その時代が求めていたから作ったけど、今は違う気がする。時代が変わったんだ。もう大量の溶接はコリゴリってのもあるけどね。」
クワヤマダくん「とあるジブリのプロデューサーさんも言ってましたよね、“その時代にしか作れないものがある”って。ダイラさんも、今の時代の空気を感じてるんですね。」
ダイラ(うなずきながら)「そうだな。この時代は、もう人間が作れるものはほぼ全て出揃ってる気がする。じゃあ、次に求められているのは、そこにあるものをどう見つめ直すかなんだろうな。」
クワヤマダくん「だからこそ、光なんですね!光と影を通して、そこにあるものを見つめ直す…。ダイラさんの特殊照明の仕事も、そこに通じているんですね。」
ダイラ「そうかもな。時代を見る直感が俺にあるとしたら、本能的に感じていることに従順でいたい。光の先に何があるのかは分からないけど、それを見続けることが今の俺の役割なんだろう。」
クワヤマダくん「それにしても、ダイラさんがティックトッカーとして新しい世界を切り開こうとしているって、すごい挑戦ですよね。まさにチャップリンが機械仕掛けの中でもがいていたような映画の一場面みたいで、ダイラさん自身が喜劇スターみたいです。」
ダイラ(少し照れながら)「はは、ティックトックって、ある意味、現代の舞台だよな。チャップリンが映画の中で機械に翻弄されていたように、今の俺たちもSNSや技術の中で踊っている。でも、その踊り方次第では、未来に何かを残せるかもしれない。ティックトックは一瞬のメディアに見えるかもしれないけど、実はそこで生まれるアイデアが未来のアーカイブになる可能性だってあるんだ。」
クワヤマダくん「確かに。今は一瞬に見えることでも、半永久的に残る可能性がありますよね。ダイラさんが新しい形で、未来に何かを刻んでいくのは、まさに時代に呼応しているって感じがします。」
ダイラ(深くうなずいて)「そうだな。俺は昔から、記録を残すことに価値を見出してきたけど、今はその記録の形が変わってきてる。それが映画のフィルムからデジタルの世界へ、そしてSNSへと移り変わっている。何が永遠に残るかは分からないけど、今、この瞬間をどう捉えるかが未来に繋がるんだ。だからこそ、今の俺は、光を使ってその一瞬一瞬を切り取ろうとしているんだ。」
クワヤマダくん「ダイラ先輩が100年後のアーティストからは何をした人と呼ばれるのでしょうかね。」
ダイラ(笑いながら)「光の先に行こうとした愚か者?クワヤマダくん、さあ、次の光と影はどこに向けようか。来年の中之条フェスに向けて一緒に考えていこうね。」
クワヤマダくん「オロカモノって響きいいっすね。次の世界へ人々を導く伝道者のアナロジーって感じで!」
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