第327話 狂気のバオバブハウス
クワヤマダくん「ダイラさん、これって…何が起こったんですか?ギャラリーが完全にバオバブに飲み込まれてますよ!?」
ダイラ「ああ、予想以上に育っちゃってね。『ハウス栽培』のテーマに忠実すぎたかな。まさか、ここまで異常成長するとは思わなかったよ。ギャラリーの壁が持たなかったのも、まあ…アートの一環ってことで。」
クワヤマダくん「それにしても、ここまで成長するなんて。普通バオバブってこんなスピードで大きくならないですよね?何か特殊な栽培法でも使ったんですか?」
ダイラ「“特殊”って言えばそうかもね。『ハウス栽培』ってのは、ただ植物を育てるってだけじゃなく、環境、つまりその場の“存在”そのものを育てる実験だったんだ。まるでアートの概念自体が生き物であるかのようにね。」
クワヤマダくん「アートが生き物…つまり、バオバブもただの植物じゃなくて、この空間が育てたアートそのものってことですか?」
ダイラ「そう、そしてその結果がこの有様だ。アートが現実の枠を越えて、場所や物質を侵食していく。まさに狂気と創造の境界線だよ。破壊されたギャラリーも含めて、これが今回の個展の真の姿なんだ。」
クワヤマダくん「なるほど…。それじゃ、予定していたギャラリートークも、もうこのバオバブの木の上でやるしかないってことですね。」
ダイラ「うん、皮肉な話だよね。未来のアートがどこに向かうかなんて、誰も分からない。けど、このバオバブみたいに、我々が想像し得ない速度で進化して、いつの間にか現実を壊してしまうかもしれない。それが、アートの可能性でもあり、恐怖でもある。」
クワヤマダくん「確かに…。現代って、僕たちの手の中にある技術や情報が、まるでこのバオバブみたいに急成長していて、気づいたら自分たちの作り上げたものに圧倒されてる。皮肉にも、自分たちが育てたものに飲み込まれつつあるってわけですね。」
ダイラ「そうだね。僕たちは、自分たちの創造力を信じているけど、同時にその創造力が制御不能になる可能性も秘めている。『ハウス栽培』も結局、そういうテーマだったんだ。人間が何かを“育てる”とき、育てているのは本当にその対象だけなのか、それとも自分自身も含まれているのか?」
クワヤマダくん「うわぁ、それってすごく哲学的ですね…。人類史上、僕たちはどこへ向かってるのか。どんどん進歩してるように見えて、実はその進歩に飲み込まれているだけなのかもしれない。」
ダイラ「進歩ってのは、いつも両刃の剣だよ。僕たちの作り出すものが、最終的に僕たちを食い尽くすかもしれない。でも、それを恐れて止まるわけにもいかない。未来のアートもきっとそうだ。予測不能で、時に破壊的で、でもだからこそ魅力的なんだよ。」
クワヤマダくん「つまり、このバオバブの木も、未来のアートの象徴ってことですね。制御不能の狂気と創造が交錯する場所…。でも、この木の上でギャラリートークするのは、ちょっとスリリングすぎますよ!」
ダイラ「スリルこそが現代のアートだよ、クワヤマダくん。僕たちが生きているこの時代は、誰もが手探りで未来を模索している。だから、アートもまた手探りなんだ。バオバブの木の上でも、破壊されたギャラリーの中でも、アートはいつも僕たちと共に進化し、時に僕たちを超えていく。皮肉だが、それが僕たちの宿命さ。」
クワヤマダくん「うーん…僕たちも、この木のようにどこまで成長できるのか、それとも、成長しすぎて自分たちを破壊してしまうのか…。考えれば考えるほど、未来が楽しみでもあり、怖くもありますね。」
ダイラ「その感覚こそが、今の時代の本質だよ。恐れと希望、破壊と創造、その全てが混ざり合った世界。だからこそ、僕たちはアートを通じてその感覚を表現するしかない。さあ、バオバブの上で語り合おうか、未来のアートについて。」
クワヤマダくん「ええ、狂気と創造の狭間で、どこまで行けるか試してみましょう!」
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