第302話 個が消滅して輝く未来

ダイラ: この世の中には、写楽のような人間がいる。


クワヤマダくん: まさに、そのような人々の存在は正体不明で謎めいていますね。


ダイラ: ちなみに、君のちょい漏れ防止パンツは誰が考案したか知ってる?


クワヤマダくん: ちょい漏れパンツに関してはまだ未経験ですー。それに、パンツの発明者なんて誰か知ってる人いるの?


ダイラ: そうだよ。我々の生活には、誰が作り出したかが分からないものがたくさんある。まるで作者不明の宝庫だ。


クワヤマダくん: そうだね。どこかの天才がひらめいたアイデアが、どこかの企業によって形にされているってことだね。でも、気にしたことはないな。


ダイラ: 作者の正体が不明であることこそ、作品が世に残る理由ではないかと思わないかい?


クワヤマダくん: 確かに、ピラミッドや謎の遺跡など、古代の作品は作者が不明だし、実は誰が作ったのか疑問なものもある。だが、作者不明だからといって、必ずしも偉大な作品とは限らないと思うけど。


ダイラ: それならば、作品に題名や作者の名前を付けずに、ただそこにあるものとして残すことで、人類の歴史に深く刻み込まれる可能性があるのではないか?


クワヤマダくん: 「作者不明=偉大な作品」という訳ではないけれど、そのミステリアスな要素は確かに人々を惹きつける。


ダイラ: そうだろう。ミステリアスさは人々の興奮をかき立てる。しかし、現代は作品がどんな意図で作られたのかに深く迫る時代でもある。


クワヤマダくん: その通りだ。だが、言葉や論理で作品を判断するのではなく、その魅力や力を感じ取ることが大事だろう。そうした作品は作者の枠を超えて、世界に広がるはずだ。


ダイラ: その通りだ。しかし、作品の中には作者の名前が失われ、消滅の可能性さえあるものもあるのだ。


クワヤマダくん: それが人々に永遠の印象を残すこともある。


ダイラ: 作者や題名が分かる作品はまだ青臭いってことだね。個への問い掛けが生まれるような時代では、まだその作品は完成していないってことだね。


クワヤマダくん: あの時代の誰かが作ったミステリアスな物体という、その時代特有の抽象的な概念として扱われて初めて人類の遺産として残る。


ダイラ:僕らの若い頃に作った作品は、日本の経済成長の頂点(バブル期絶頂期)に生まれたミステリアスな作品として後世に残るのだろうか。


クワヤマダくん:もう少し時が過ぎるのを待つのも、我々アーティストの仕事ですね。


ダイラ:時代が変わる潮目を見極める力が、生きるか否かの運命なのか~。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る