第294話 スタジオ「食堂」

ダイラ:クワヤマダくん、立川においしい食堂があるみたいだよ。


クワヤマダくん:おいしい食堂って?何がメインなんすか?


ダイラ:定食なんじゃないかなぁ。知り合いが言うには、餃子定食がいいみたいだよ。


クワヤマダくん:ラーメンとかありますか?


ダイラ:まぁとりあえず行ってみようよ。


~~~~~


クワヤマダくん:先輩、あの食堂にはメニュー表が無かったですね。


ダイラ:やたらアートを語る若者がいたよね。


クワヤマダくん:あの人、どこかで見たことがあるんだよなぁ。美術予備校の友だちの友だちだったような気がする。あの達観した雰囲気はどこかで会った気がする。


ダイラ:だいすけ!って周りの人たちから呼ばれていたよね。アルバイトかなぁ。


クワヤマダくん:美大の教授より、未来の美術教育について熱心に語っていましたよね。語りが穏やかだけど、チャレンジングな思考回路には共感できた。


ダイラ:結局、僕たちお茶を飲んだだけで帰ってきた。


クワヤマダくん:まぁ。あの語りでお腹一杯になりましたけどね。


ダイラ:店の片隅で、何か作っていた人もいたけど、あの店は何だったんだろう。


クワヤマダくん:あの人から未来の「食堂」とは?と問いを投げかけられて、先輩もスイッチ入りましたね。


ダイラ:答えの無いことを考えるのって、禅問答みたいで、面白いよね。探究心に火が着いた。結局、食堂とは人生のバルコニーって答えていた。


クワヤマダくん:僕も、同時にラーメンとは?と考え始めたら、食べることを忘れていました。この商店街も今後の少子高齢化によって、シャッター街になるんじゃないかと、問われたときに、僕たちの役割って何だろうって考えました。


ダイラ:閉じたシャッターに絵を描く、不謹慎なアーティストも出てきそうだよね。喜んでいいのか悲しんでいいのか分からない状況こそがアートの役割?


クワヤマダくん:シャッターに絵を描かれたら、開けられねーじゃねーか!って店主に怒られそう!でも、人々の心を打つ凄い絵がずらっと並べば、それはそれで、街の活性化にもなる。シャッターの外で、饅頭を売るみたいな。


ダイラ:それにしても、あのアルバイトの若者がイメージしていた、数十年後の未来を予測しながら、自分たちができることを考えて、今を生きることって大切だね。


クワヤマダくん:人々の生き方や考え方が大きく変わる節目に生きているって気が付きました。熱いものを食わされた感がありますね。


ダイラ:まぁ。喉元過ぎれば熱さを忘れるけどね…。


クワヤマダくん:にんげんだもの。


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