第289話 未来魚メダカちゃん②だって鬼だもの

ダイラ: ねえ、クワヤマダくん、未来魚メダカちゃんどうしているかなぁ。

クワヤマダくん: 寂しいよね。

ダイラ: 彼女、排水溝に吸い込まれてから、俺たち、二人で泣いちゃったよね。

クワヤマダくん: えっ、彼女?僕は、オスかと思っていたんだけど。

ダイラ: そんなのどっちだっていいよ。メダカちゃんに感じた愛着がは同じだろ。

クワヤマダくん: 愛くるしい姿と、未来を語る口調に気持ちを奪われた瞬間だった。

ダイラ: でもさ、その後の昼飯で、あじの開き定食を食べちゃったんだ。しかも、クワヤマダくんはシラス丼を貪り食っていたよね。なんでこんなにも不合理な心理システムを私たち人間は持っているんだろうって…。

クワヤマダくん: その言い方だと、僕の方が鬼みたいに聞こえますが…。人間の複雑な心理ってのはよく分からないもんだよな。未来魚メダカちゃんの問いに答えるのは難しいけど、考えさせられる出来事だったよ。


ダイラ: ねえ、クワヤマダくん、未来魚メダカちゃん、排水溝に吸い込まれてしまったけど、別の時代にワープしたとも考えられるよね。

クワヤマダくん: 同じ時代のどこかの水槽に紛れ込んでいるかもしれない。

ダイラ:この世に一体何匹のメダカが存在するのだろう。フェミル推定してみようよ。まずはこの日本の中に何匹いるか。

クワヤマダくん:多分、何億匹とか何兆匹とかだと思うよ。推定したくない数。

ダイラ:未来魚メダカちゃんに出会う確率も本当に無いに等しいものだったと考えられるね。余計悲しさが倍増する。

ダイラ: ねえ、クワヤマダくん、能登島のジンベイザメのこと聞いたことある?

クワヤマダくん: ジンベイザメ?ああ、あの大きな甚平の斑点が体中にある珍しい大型のサメだね。人気あったよね。何かあったの?

ダイラ: 元旦の大地震が原因でジンベイザメの二頭が亡くなったんだ。ジンベイザメのファンたちは悲しみに包まれてるって。

クワヤマダくん: 日本に5頭しかいない貴重なサメですよね。地球上に何体いるのかこちらもある意味フェルミ推定したくない数。

ダイラ: こういうことって一筋縄ではいかないんだよな。

クワヤマダくん: そうだな。この世界って、喜びと悲しみが入り混じってる。

ダイラ: そうそう。それに、かたや悲しみに包まれている一方で、飲み屋でジンベイザメのニュースを見ながら、サメの刺身をつついてくだをまいている人も同時に存在する。

クワヤマダくん: 映画「ジョーズ」を見ながらサメを敵対視する人もいる。一筋縄ではいかないってことか。複雑怪奇な人間社会だ。鬼はどこにでもいる。

ダイラ: 世の中が複雑で理解しきれないことがたくさんあるって、メダカちゃんは教えてくれたね。

クワヤマダくん:先輩、この後、寿司食いに行きませんか?

ダイラ:仕方ないよね、人間をやるって、自分の中にいると共に生きるってことなんだよね。

クワヤマダくん:そのあと、先輩に豆をぶつけるんで、安心してください。





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