第236話 屋根の上の秘密(パラレルワールド編)

 ある日、母親は、ダイラが学校でいじめられていることを知った。ダイラは、両手にマスカケ線を持っていることや、普通の子供たちとは違う興味や行動をすることで、クラスメートから変わり者だとからかわれたり、仲間外れにされたりしていた。ダイラは、自分のことを悪く言われても、反論したり泣いたりしなかったので、いじめはエスカレートしていった。ダイラは、顔を殴られのように腫れ上がっていたこともあった。自分がどうすればいいのかわからず、ただ黙って耐えていた。


 母親は、ダイラの担任の先生に相談したが、先生はダイラのことを理解してくれなかった。先生は、「ダイラ君は優秀な子ですが、もっとクラスの雰囲気に合わせてみてはどうですか?」「自分の好きなことばかりやっていると、将来困ることになりますよ。」などと言ってきた。母親は、先生の言葉に怒りを感じたが、先生に反論することもでなかった。


 母親は、ダイラに対して何かできることはないかと考えた。そんな時、母親はインターネットで「プラネタリア」というプロジェクトを見つけた。「プラネタリア」とは、「ドームのないプラネタリウム」というコンセプトと共に作られた鉄と特殊照明を使った作品だった。作品の作者は「市川平」という若手アーティストだった。市川平氏は、実は「両手にマスカケ線を持つ」という特徴を持っていた。


 母親は、市川平氏の作品に感銘を受けた。市川氏が「ダイラ」と似た特徴を持ちながらも、自分の個性を活かして素晴らしい作品を作っていることに感動した。母親は、市川平氏の作品を「ダイラ」に見せてあげたいと思った。母親は、「プラネタリア」の展示会場に「ダイラ」を連れて行くことにした。


 「プラネタリア」の展示会場に着くと、「ダイラ」は目を輝かせた。「プラネタリア」と「ドームのないプラネタリウム」というだけあって、空間全体が星空に包まれていた。特殊照明によって作られた星々が、壁や床や天に散りばめれ、母親とダイラは目を泳がせた。


 展示会場を回りながら、母親はダイラに「市川平さんと同じように、君も素晴らしい個性を持っているんだよ」と話した。ダイラは、初めは少し戸惑っていたが、母親の言葉に徐々に心を開いていった。


 展示会場を後にする頃には、ダイラは自分に自信を持ち始めていた。母親は、ダイラがいじめられていることについても話をすることができた。ダイラは、自分の性格を大切にし、自分の個性を活かして生きることを決めた。


 その後、ダイラはクラスメートたちとも積極的に交流するようになり、周りからの評価も変わっていった。ダイラが自分らしく生きることで、周りの人たちもその個性を認め、受け入れることができたのだ。


 母親は、自分が見つけた「プラネタリア」が、ダイラにとって大きなきっかけとなったことに感謝していた。同時に、ダイラが個性を発揮できる社会になるよう、周りの人たちとも共に取り組んでいくことを決めたのであった。

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