光子ダイラ

第221話 光子の異常な振る舞い

「ダイラさん、クオークや光子って知っています?」


「素粒子の仲間でしょ。原子核の周りをグルグル回る連中だ。あいつらが超高速で自転車のスポークのように動くお陰で、原子核の周りの空間が埋められ物質として成り立つ。」


「素粒子の連中ってダイラさんの行動くらいかなり謎めいているらしいっすね。」


「いや~クワヤマダくんの行動力には負けるよ。」


「何が不思議かと言うと、人間が素粒子の動きを観測する前と後では行動パターンが変わるらしいです。」


「へ?素粒子は人の目を気にするタイプなの?」


「マジで人の目を気にするらしいです。あいつらは同時に2か所に現れたり消えたり、とにかく動き方に規則性がないらしいのです。量子もつれて言って、素粒子の片割れを観測したときにマイナスならもう一つの片割れがプラスになる。コインの表と裏が人の観測により同時に決まる。数百光年離れていてもそれは同時に行われるそうです。」


「不思議だね。UFOが一瞬で数百光年の距離を行き来する原理がきっとそれだね。NASAが本気でUFOを調べ始めたのも、その原理が証明されノーベル賞をとったからだと思うよ。人間が観測した瞬間に現象が決まるなんて一体どういうことだろうか。」


「光子を二つの隙間に噴射したとき、隙間の向こう側のスクリーンに付く光子の痕跡を見る2重スリット(隙間)実験をしたときに驚くべき結果が出ました。普通2つの隙間があれば、水を噴射した仮定で考えるとスクリーンに付く痕跡は縦縞の2本です。しかし、光子はしま模様として無数の縦じまがスクリーンに付着した。光子が波であると考えると、2本の隙間を通り抜けた波の光子はお互いに干渉しあって縞模様をつくることは理解できます。」


「光子は粒じゃなくて波に変化したってこと?」


「それで、試しに2つの隙間に一つの隙間ごとに光子の粒を一つずつ通らせてみたら、またもや縞模様が複数出現したのです。原理的には2つの縦模様しか現れないはずなのに、縞模様ができてしまいうのはどう考えてもおかしいのです。」


「隙間にうまく野球ボールを通し向こう側の壁に当てたら一つの痕跡しか現れないはずなのに、縞模様がつくとは気味が悪い現象だね。隙間を通る瞬間に行動が変化しているのかな。」


「そこで光子が隙間を通る瞬間に変化していると仮定し、隙間付近に観測機を設置しました。」


「人の目だね。」


「そしたら、普通の二本の縞しかできなかったそうです。」


「ということは、光子は人間の目(意識)が入り込んだ瞬間に当たり前の現象に行動を変えるってこと?」


「素粒子の連中が人間の意識と関係していることを疑われ始めたのが、この実験後かららしいんです。人が見てないところでは無茶苦茶不思議な行動をする。」


「この世界は人間の意識により成立しているって聞いたことがある。僕もクワヤマダくんもすき間だらけで雲のようにモクモクした原子の集合体なんだけど、お互いに視覚を通して意識しちゃうことでビジュアルとしての存在が脳内に現れる。何となく分かるなぁ。子供の頃考えていた世界観と今の世界観を比べると今の方が圧倒的に世界観が広くなっている。見えなかったものが見えてきたし、見えていたものが見えなくなっている。」


「水木しげるは妖怪は子どもにしか見えないと言っていましたね。」


「知らないこと観測していないことは自分の中では無いことになっている。」


「観測した途端にその対象は固定化され物質として目の前に現れる。視覚障害や聴覚障害のある人と関わると、認識している世界観が違う場合がある。障害がある方の方が僕たちが見えていないものを認識していることが多々ある気がする。」


「2スリット実験だけでそこまで言えるとは思わないですけど、観測した瞬間から世界は固定化されるのであれば、まだ見ぬ世界が複数存在しているってことですね。」


「多世界(パラレルワールド)論が、量子力学の視点から実証されるのは近々だ。」


「ホーキング博士が亡くなる前に、宇宙は無限大の数が存在するという論文を発表した。水泡のような一つに私たちの宇宙があり、その他にも無限大に同じような宇宙が存在するなんて考えただけでもミステリアスで興味深い。でもそう認識した瞬間から世界は複数存在することに固定化される。もしかして言ったもん勝ちみたいな世界?」


「量子や素粒子の世界は未知であるけど、自分の観測(考え方)次第で世界の様相は大部変わってくると考えると夢のある話にも聞こえてくるよね。」


「量子力学の世界では時間も存在し無いと言っている。この世界は過去現在未来が重複しているそうだ。時間や過去・未来は人の意識が生み出した幻想なんだ。」


「ダイラさん、腹が減ってラーメン食いたいという僕の気持ちも幻想なんでしょうか。」


「ラーメンの形と思い込んでいるだけで、素粒子を体内に取り込んでいるだけなんだろうね。量子眼鏡みたいなものが発明されたら、この世界は何もないただの闇なのかもしれない。」


「さみしい~。その眼鏡開発してほしくないなぁ。」


「僕が素粒子に似ているって、人々の意識していない間に不思議な行動をしているっていうこと?」


「そうっす!」






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