第218話 冬将軍と全裸と靴下

「じぇんぱ~い。」


「どっどうしたのクワヤマダくん!」


「さすがに寒すぎて、今シーズンはタンクトップ止めました。」


「今年の冬将軍の寒さはクワヤマダくんに長袖を着させるほどだったんだね。」


「ヘックション!風邪ひいたかも・・・。」


「クワヤマダくんの姿を見て、ふと、思考実験をしたくなった。」


「何ですか?」


「もしも、靴下のみ履いた状態で、全裸でこの寒空の街中に一人取り残されたらどうする?」


「死んじゃいますよ。」


「寒さをしのぐためにサバイバルするなら、どんなことができそうかなぁ。」


「とりあえず、片方の靴下を脱いで股間を隠します。」


「極限の寒さの中、本当にそんなことをするかなぁ。助けを求めるために移動する手段として靴下はかかせないはず。足が冷えたらその場で終わりだからね。」


「でも、さすがに靴下だけ履いた裸の人がうろついていたら、ヤバい奴だと思われて誰も助けてくれないんじゃないですか。」


「そうか。あれだけは隠した方がいいのかなぁ。でも、片足靴下で股間靴下の方が見た目がヤバいんじゃないの?」


「そうですね。この靴下という存在が意外にやっかいですね。あると有難いけど、靴下だけだと、ビジュアル的に難しさが出てくる。」


「両手に靴下も厳しいものがある。」


「靴下をくわえて歩いたらどうでしょうか。」


「う~ん。違う意味が出てきちゃうなぁ。人でも食った後みたいな雰囲気が漂い、人々は引くんじゃないの?」


「頭の上に載せたらどうですか?」


「行き詰ったアーティストだと勘違いされて、逆に放っておかれる危険性がある。」


「お尻に挟んだら?」


「それは心に余裕がある人だと思われる。」


「耳当てにするとか?」


「兎年にちなんだパフォーマンスだ。」


「かわいらしいと、子供たちが集まってくるかもしれません。」


「通報されるわ。」


「結構難題ですね。」


「妙案を思いついた。靴下を水で濡らしブンブン振り回して凍らせる。その凍った靴下でお店のガラスを派手に割るんだ。割れたと同時にその場に倒れ込む。すると通りがかった人々は全裸で倒れた人を見て、事件や事故に巻き込まれた人だと勘違いして救助してくれるんじゃないかなぁ。」


「最高ですね!何て言うわけないじゃないですか。僕はその凍った靴下をアイスのように舐め、奇異な目で見る人々に、これが普通じゃないの?っていうオーラを出します。」


「あ!それだ!奇異な行動をすると必ず、同調する奴が現れるのが世の常。」


「真似して、全裸靴下になる奴の服を借りちゃえばいいんだね。」


「全裸靴下になったヤツを見ながら、もうちょっとこうかな?なんて指導したりして。」


「クワヤマダくん、ここまで読んでくれた人たちの心の冷え方はきっと半端ないと思うよ。」

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