第217話 巨大な夢はクリエイティブにする
「世界平和と差別がない世界をつくりたい。これが僕の最終ゴールなんだ。」
「実現にはかなり道は険しそうね。この戦争と差別が横行する世の中を見て本気で言っているの?目標が大きすぎるんじゃないのかなぁ。」
「あなたはドリームキラー認定!」
「なにそれ?」
「人の夢を奪う人のことをそう呼ぶんだよ。」
「それは、あなたのことを思って忠告しただけよ。」
「夢を実現させるために障壁になるのが身近な人たちと言われている。身近な人は、親切心でそういうこと言うんだけど、実はそれが一番のドリームキラーになりえる。」
「なるほどね。高校の成績が今一な息子が難関大学を受けようとしたら、丁度いいとこ受けとけばと言ってしまうのが普通の親だわ。」
「人は飛び抜けたゴールを設定しないと、クリエイティブな思考が働かないみたいなんだ。」
「クリエイティブ?」
「クリエイティブというのは合理的な判断や行動をしてそれ相応のことをすることじゃなくて、新しい概念や生き方を創造することだよ。」
「確かに、世界平和と差別をなくすゴールを設定したら、日々の生き方や何気ない言動や判断、選択が変わってきそうな気がする。」
「人間は見たいものしか見ない習性がある。自分が猫を飼い出したら、街中で見る猫の数や猫の情報が異常に増え感じ始める。それをスコトーマの原理というらしいんだ。興味のあるものはやたらと多く意識して見るから、情報量が増えるんだよね。」
「なるほど、ということは、ゴールを大きくすればするほど、見えてくる物が増え広がるということね。」
「そうだね。世界平和と差別をなくすために、どんな食事をするか、仕事をするか、表現するか、排泄するか・・。そこにクリエイティブな思考が生まれる。」
「でも、普通に生きている人は自分が世界平和と差別をなくすような大きいことができる存在だなんて考えないし、途中で挫折する気がするんだよね。」
「自分の大きな夢は人には言わないことが鉄則らしい。親切なドリームキラーがうじゃうじゃ集まってくるからね。じっと心の中で唱えて人には言わない。」
「アート作品に触れると、壮大なメッセージを感じるときがあるのは、もしかしたら作者がとんでもない夢を唱えていて、それが私たちに伝わっている可能性があるかも。」
「アートが現代に続く理由はそこにあるのかもしれない。人々を分断するアートはすぐに廃れる。今残っているアートは平和や差別に対する人々の無意識の湧き出たメッセージが表現されているとも捉えられる。人々が望んでいる世界は実は似ているのかもしれない。」
「個性や多様性を認めるムーブメントとは逆に思想を統一しようとする動きが強くある。でも根っこの部分では、人間は一つになりたいと考えているんじゃないかなぁ。」
「そうか、最終的には一つの生命体となるために、混沌とした世界が続いていると考えれば、世界平和と差別をなくすためにやるべきことが見えてきそうな気がする。」
「国の境界線が無くなる時代になれば、その夢が叶う気がする。人間に壮大な催眠術をかける技術が開発されるとか?」
「もうすでにかかっていたりして。」
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