第208話 Dr.コトー王国
「ネタバレになるから言えません。」
「いいじゃんか。どうせ、島の人間がやばいことになって、コトー先生がゴットハンドで野戦手術するんだろ。」
「う~ん。それはないこともない。」
「でも、あれから20年たち、コトー先生の頭も大部白くなったね。」
「柴咲コウ、大塚寧々、泉谷しげるが全く変わっていないのが不気味でした。一瞬CGかと思いましたよ。」
「コトー先生は相変わらず、あのだだっ広い島をチャリンコで往診しているんだろ。」
「それがですね・・・。コトー先生は大きな問題を抱えているのです。」
「マジで。やっぱり吉岡さんが演じるものには影がないとね。」
「今回ばかりはやばい感じです。」
「分かった。ムツゴロウさんだろ。」
「え?」
「構造的にはあの物語はムツゴロウ王国と同じだと思うんだ。」
「まぁ。ムツゴロウさんとコトー先生の顔はどこしら似ているし、奇妙なハイテンションと死神のような表情を繰り出す様は、近いものがありますが・・。」
「吉岡さんは、黒板五郎と渥美清というビッグスターを間近で見て育ったんだよ。3人の顔は似てはいないけど、目の中に現れる虚無感は共通するものがある。ムツゴロウさんは役者じゃないけど、笑顔の中に垣間見える冷酷な目つきは同じだね。」
「都会を捨てて、理想を追い求め北海道の山奥に暮らすとああいう目つきになるのですか。黒板五郎とムツゴロウさんがダブって見えてきた。」
「結局、コトー先生だって、南の島を選んだ訳だろ。目つきだってああなるさ。文明の光が届きにくい世界で生きるってことは、傍からみたらかっこいいけど、覚悟を決めないとやられる。」
「あぁ。コトー先生の生き様の結果が、現代の過疎化した地域の問題提起になるんです。」
「島民の連中はコトー先生しか頼れないんだろ。言ってみれば中小企業のワンマン社長みたいなもんで、島民の命はコトー先生が握っている。」
「ムツゴロウ王国の動物と島民を同じ土台で語るのは危険ですよ。」
「いやそうじゃなくて、経営が悪化したら動物や従業員はムツゴロウさんを襲うだろ。どんなに動物を可愛がったって、腹が減って身の危険が迫ったらやっちゃうんだよ。」
「ネタバレしそうな誘導ですね。思わず頷いちゃいましたけど・・。」
「お互いに信頼関係があればあるほど、どちらかが傾いたときのバランス関係の狂い方は、弱肉強食の世界観が丸出しになる。強者だった者が一瞬にして弱者へと変わる。」
「いや~。ネタバレギリギリですが、今回のDrコトー診療所は問題提起だけで終わるとだけ言っておきます。これはどこの田舎、家庭でも起こりうる、深刻な問題です。未来が見えない状況は、恐怖ですら感じます。」
「大部言っちゃったね。」
「いつか、ムツゴロウ物語が映画化するなら、絶対に吉岡さんがムツゴロウさん役やりますよね。」
「それは、充分にありえるな。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます