第207話 北の国から2022/12/24
「父さん、さすがにカボチャはまずかったんじゃない。」
「父さんは誠心誠意を込めたんだ。純は黙っとけ。」
「いや。そういう意味じゃなくて、カボチャのヘタはまだ青かったから、もう少し熟したのがよかったのではないかと・・思うのです。」
「兄さん、お父さんは疲れているから、あまりくだらないこと言わないで。」
「おい、蛍、昨日東京のダイラさんが富良野まで運んでくれたツリーを見に行こうよ。」
「そうね、お兄ちゃんが作った風力発電で、ツリーの電飾もきっと綺麗よ。」
「いや~。俺って天才だよな。廃材で風力発電つくる能力があるなら、その力を生かした職に就けって近所の人からも言われたよ。」
「ははは。近所って、お隣さんまで5kmあるのよ。」
「おい、蛍、あそこにキツネがいるぞ。」
「るーるるるるるっ・・・」
「お父さん、あれは本当にキツネかしら。身体が緑がかっているわ。」
「蛍、あれは妙に口先が長いぞ。」
「ワニじゃないの?こんな雪深い土地にワニなんかいるのかしら。」
「あっ消えた。純、追いかけろ!クロコダイルじゃないのか。捕まえて財布にするぞ!」
「とっ父さん、ワニなわけないし、財布に入れるお金は家には無いでしょ。」
「お前は、お父さんにお金が無いことをバカにするのか。」
「だって~。彼女へのお詫びがカボチャだよ。財布作る前に、お金ちょうだいよ。」
「うるさい。父さんの気持ちが分かっているのか!みうらじゅん賞を逃したダイラさんのためにキツネをワニに仕立てたんだぞ。」
「確かにみうらじゅんのワニブームは分かるけど、そういう浅はかなところが、父さんの理解不能なところなんだと思うのです。」
「ねえ!見て!ダイラさんのクリスマスツリーの輝き、今の私たちの心に沁みるわよね。」
「あれ?設置したときより大部傾いたような気がするのは気のせいか?」
「雪の影響かしら。ダイラさんは何も言っていなかったような。傾くと大砲みたいにみえるなぁ。蛍よ。オレももう少し若い頃はあんな感じだった・・。」
「ねぇ。しょうもないことはこの素敵な作品の前では言わないでくれる。それより、お母さんは今頃誰とクリスマスイブを過ごしているのかしら。」
「お~い。蛍ちゃん。その話は止めようね。そう言えば、父さん、ダイラさんがノストラダムスの大予言に合わせてこの作品を作ったと言っていたよ。」
「人間が滅びたら、私たちはどうなるのかしら。」
「お父さんは一人でも生き残りたいな。」
「富良野で一人で過ごすんですか!やっぱりあなたは変人ですね。」
「兄さん、お父さんは孤独が好きなんだから、いいのよ。東京に疲れて、本当は一人で富良野の山奥で生活するつもりでいたのだから。父さん一人じゃドラマが盛り上がらないから、私たち売れっ子子役が抜擢されたのよ。ある意味感謝しないとね。」
「蛍は売れっ子かどうか分からないけど、ぼくは葛飾では満男、富良野では純だからね。吉岡はつらいよ。」
「今日、家にはサンタクロースは来るのかしら。」
「来るでしょ~。明日の朝、枕元にカボチャが置いてあるさ。」
「純!お父さんはな!」
「二人共もうやめてよ。あれ?あの上空に浮かんでいるものは何?あ!ツリーの電飾が消えちゃった。」
「クワヤマダくんの妄想はついていけないよ。この後、ノストラダムスの予言通りになる設定なんでしょ。」
「ダイラさん、北の国から2022はこれでいけますよ!」
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