第206話 ろくでもないすばらしき世界
「宇宙人ジョーンズは、地球人の生活の二面性をこう表現している。」
「この惑星の住人は、どこかヌケている。ただ、この惑星の夜明けは美しい」
「分かる気がするなぁ。飯を食うために働いていたはずなのに、仕事が忙しすぎて飯を食う時間がないのだ。」
「夜勤明け、くたびれ果てて缶コーヒーを飲みながら夜明けに感動するみたいな。」
「人のために生きようと、必死で勉強して仕事したけど、身近な人を不幸にしていたと気付いたときにろくでもない自分を意識する。」
「子どもたちに自由を与えようと放任していたら、自由に生きる術を知らず不自由な人にしてしまった。自由に生きるためには、自由を得る作法や技能がないとダメなんだよね。」
「宇宙人ジョーンズを地球に派遣した宇宙大統領みゆきが、地球人は働き過ぎだからといって、働くことをストップした。」
「あれは辛かったなぁ。始めのうちは、休めるラッキー!と思っていたけど、何にもやることがなく退屈な日々。いざ働こうとするとビリビリして身体が動かなくなっちゃった。」
「寝食もままならない、ブラック企業に勤めている人々は、廃人になりかけたらしいわよ。」
「結局、働くことって、苦痛も多いけどやりがいもうっすらとあるんだよね。」
「今日も働きながらやりがいを感じようと意気込む奴はいないけど、じわっと後からくるのかもしれない。」
「職場で自分の能力が生かされているなんて大して思わないけど、ぐだぐだ働いて時間を潰しているだけかもしれないけど、もしかしたら何か意味があったかもしれないとたまに感じることがある。」
「やりがいは生きがい。高齢者だって、何かしたいと常に思っている。近所の高齢者施設では80歳の介護士が70歳の世話をしているらしい。元気であれば、いくつになっても働きたいんだよ。90歳の介護士もいるらしい。」
「その究極がアーティストだと思うよ。だって、どこのだれか分からない人に向けて、美を提供し続けているのだから。しかも人生をかけている人も多い。ときには、見向きもされないときだってある。ブラックホールに作品を投げ込む行為に近いものがあるよね。」
「でも、アートは止められない。働くことの根源にはアートがあると思う。誰かがうっすらと感じるであろう幸福感を間接的でも感じることができたら、作者も幸せになれるんだ。」
「世界中にアーティストが増え、SNSで表現する人間が増殖する昨今は、そんな人間の本性が炙りだされているのだろう。」
「ブラックホールに自己を投影する行為に幸福を感じるとは、生産性がなくどこかヌケているけど、遠くで眺めたら美しい姿なのかもしれませんね。」
「人間って奴は、非常に興味深い。」
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