第197話 アンチW杯

「ダイラさん~。巷では毎日サッカーW杯の情報ばかりでもうウンザリです。」


「クワヤマダくんはサッカー嫌いだったんだね。」


「ゴムボールを蹴って鉄の枠に入れ熱狂するなんて野蛮で意味不明です。」


「日本がドイツやスペインといった強豪国を倒した試合はかなり盛り上がっているよ。日本はベスト8を目指しているみたいだけど、サッカーに興味のない人からすれば、結局どうでもいい情報だよね。」


「イケメンサッカー選手の美人妻特集なんかを観ると、プロデュサーの優性思想が混ざり込んでいる気がします。運動神経がよく顔がイケていてお金がある成功者をサッカーという競技で闘わせ注目させお金儲けしているようにしか見えないんですよね。」


「人間は無意識的に本能が求める行為を正当化しちゃうんだ。クワヤマダくんも一応チェクしているんだね。」


「僕はゴムボールを鉄の枠に入れるに多くの人が人生を投影し過ぎている気がします。」


「日本はまだしも、サッカー強豪国は生れて死ぬまでサッカー漬けの人たちもいるから。」


「昔、コロンビアの選手がオウンゴールしたことで自国のギャングに命を奪われた事件があった。今大会も優勝候補が敗退するなどの波乱が巻き起こっているし、ベルギーでは暴動が起きた。チャンスを生かせなったベルギーの選手は国に帰るのを戸惑うだろうね。」


「人心を狂わすサッカーは中毒性が高いから規制が必要です。」


「ドーハの歓喜を観に行かないといけないと妙ながかかった日本のサポーターがカタールの競技場に溢れているらしい。」


「スペイン戦で三苫選手がライン際でクロスを上げ、田中選手がゴールを決めたのは、あなたがたの人生には何の影響もないんですよ。と誰かが言ってあげないといけないと思います。」


「そうだね。あのゴールはあの二人の才能が噛み合ったことで生み出されただけだからね。あの二人は幼馴染らしいからそれには驚いた。大天才の横にはやっぱり大天才がいる法則はあるかも。スタジアムで大泣きしているサポーターがいたけど、早く日本に帰って自分の夢のために邁進したほうがいいってこと?」


「泣くのは勝手ですが、人間が生み出した合法ドラッグサッカーはたちが悪いなぁと・・。日本はベスト16に入ったことで、FIFAから17億円がJFA(日本サッカー協会)に振り込まれます。選手にはW杯出場で1000万円、ベスト8で800万円が支給されます。」


「それだけ世界的なスポーツでビッグマネーが動いているのね。W杯の放映権を勝ち取ったアベマは200億円の売り上げとか・・。」


「そんなことを知ったら、お金も無いのにカタールに行きビービー泣いている場合じゃないですよね。僕みたいにアンチサッカーの考え方はある意味、公衆衛生的に評価されてもいいと思います。」


「ボールをうまく蹴れる人がいい思いをする世界観はどう考えても謎だらけだよね。でも、サッカーの起源は敵の生首を蹴り合ったことが由来らしいから、人間のおぞましさを形を変えて商業化したことにも目を向けたいなぁ。ある意味人間の本能を創意工夫した賜物って気もする。」


「人間って悪いな~。」


「未来の子どもたちが読む歴史の資料集には、21世紀に流行ったコロナという疫病でパンデミックとなり、サッカーという謎の競技により多くの人間が人生を狂わせましたと明記されるかもね。」


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