酔いダイラ
第191話 ビワコB滞在記~近江八幡編②~
「せんぱ~い。近江八幡の街中が面白くて歩き回っていたら迷子になっちゃいましたよ。」
「クワヤマダくん、ここは織田信長の安土城の城下町だからね。日本家屋や武家屋敷、酒蔵が立ち並ぶ街は魅力に溢れている。1570年頃、日本を訪れていたイエズス会の宣教師ルイス・フロイスも安土城と街のセンスには驚いたらしいよ。」
「今回、第10回を迎えるビワコビエンナーレで、歴史ある酒蔵の中でせんぱいのクーリングタワーズが復活しセルフコラボすることをせんぱいは想像していましたか?」
「あぁ。この日のために軽井沢の核シェルターに閉まっておいたんだよ。ふふふ・・。未来なんか予測できないけど、30年の時を経てお披露目できるとは感慨深いものがあるね。酒蔵だけに発酵具合もいいんじゃないかなぁ。」
「発光具合は最高でしたよ。でもちょっと酒蔵だけにヒンやり寒いっすよ。」
「そう言えば観覧していたどこかの兄ちゃんが、スタッフさんにしつこく寒くないっすか?と聞いていたなぁ。」
「あいつどこかで見たことあります。思い出した!他の展示会場でもやたらスタッフさんに話かけていた奴だ!山の湯では、ダイラさんの特殊照明は何で黄緑色じゃないんだとか、番台に座らせろ黒電話は珍しいとか、ピンクの牛乳瓶の中身もピンクなのかとKYな質問をしていたんですよ。スタッフさんも呆れかえっていました。」
「そういう奴ってたまにいるんだよね。あいつクーリングタワーズの作品の間を這って動画を撮っていたよ。身体がでかいから作品にボンボンぶつかるんだよね。こっちは精密に設置してあるからズレるんじゃないかと冷や冷やもんだよ。そうかと思えば、後から来たお客さんに今撮影中だから静かにしてくれとか言っているし、一体何者なんだろう。酔っ払いかなぁ。」
「変な奴ですね~ダイラ作品のストーカー?でも、確かにクーリングタワーズの中を歩くと平衡感覚が失われ、浮遊しているように感じます。せんぱい、あれは本当に30年前に制作したのですか?古さを全く感じないんですけど・・・。」
「あの頃100年後を見据えて作っていたからね。だからキャプションにも制作期間1993~2093って書いてあるんだ。」
「マジっすか?」
「それは冗談だけど、作品にそのくらいの寿命があったっていいだろ。作品が輝き続けることに時間の長さは関係ないね。」
「懐かしい~。柴田恭兵の決め台詞。あの二人も70歳を超えて、再びあぶない刑事の撮影に入ったみたいですよ。」
「まだあの二人はやるの?かっこいいね。輝きは失われない。」
「せんぱ~い。さっき食べたアイスのせいか、この倉庫の寒さからなのか腹が痛くなってきました。」
「関係ないね!」
「もう漏れそうです・・。」
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