第174話 スーパー老人の夢

「ダイラさん、この国の高齢者は世界的に見ても冷遇され過ぎですよね。」


「少子化により、支えきれなくなった高齢者のために作られた2030年のによる影響は計り知れない。」


「高齢者という概念を申告制にした。」


「80歳でも健康年齢が60歳ならば、高齢者申請ができない。」


「クワヤマダくん、年金制度もAIによる健康診断が義務付けされ、健康年齢90歳以上余命10年以内でないと雀の涙も貰えないなんてさすがに厳しいよね。」


「若い頃、健康に気を付けてきた人ほど、高齢者になれずいつまでも働かされる。僕は健康年齢30歳でしたので、多分一生高齢者になれない気がします。」


「近所のスーパーには夕方になると高齢者志願者が集まってくるんだって。」


「どうしてですか?」


「賞味期限切れのお弁当や腐りかけの食材を貰いにくるんだよ。」


「違法ですよね。」


「60歳以上の人には賞味期限は必要ないということで、ザル法扱いとなった。」


「確かに、僕らが若い頃には賞味期限も無かったし、腐りかけの物も臭いをかいで食べちゃっていましたけど・・。」


「いくら健康年齢が若くても脳年齢は落ちてくるため、2023年頃、最低賃金は1200円を超えたんだけど、2025年の長引く円安対策に60歳以上の労働者の最低賃金を500円にし、60歳以下を2000円にした。要は経済活動を活発にするために低年齢層の社会参加を促した。」


「高齢者は生活できないですよね。そりゃ、スーパーに並ぶわ。時給2000円なら引きこもっていた若者もしぶしぶ社会に出てくる。」


「それが、そう簡単でもない。2000円プラス、ゲームの課金ポイントを付けている経営者も増えているみたいだよ。」


「高齢者は医療費がほぼタダの時代もあったけど、今は60歳以上の人間は病院に基本的には入れない。」


「それは差別ですよね。病気になったらどこへ行けばいいのですか?」


「情熱温泉だよ。」


「病は気からという精神論で生き抜いてきた世代は、夢と目標を再設定することで病気に打ち勝てという横暴な法案が作られた。プロジェクトX情熱大陸推進法だ。」


「昔そんな番組があったような気がする。」


「情熱温泉で、精神論をぶち込まれながら、温泉に浸かる日々。割と回復する人も多いらしいから、人間の体の仕組みはよく分からん。」


「いつまでも健康で若くいたい気はしますが、高齢者になることが夢になる時代が来るとは夢にも思っていませんでした。」


「だから、クワヤマダくんは高齢者にはなれないから。そこを目標にしない方がいいよ。」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る