第173話 コスプレ国の住人

「この国の円安はいつまで続くんだろうね。」


「輸入品が高くて困っているよ。海外の旅行者は自国よりも物価の安い日本で楽しんでいるみたいだけど。この国(日本)は物価が上昇している割に給料が増えないから、以前にも増して私は物を買わなくなった。」


「日本の旨味を日本人が味わえず、海外の人に搾取されていると考えると複雑だわ。」


「搾取だなんて、インバウンドで経済を建て直すと考えれば、有難いことだ。」


「地方のリゾート地も、バンバン海外の富豪に買われているみたいだよ。地元の不動産は海外の人に売ったほうが得だからね。」


「それも含めてインバウンドなんだわ。」


「この先、円安は150円台も視野に入ってきたみたいだよ。」


「そもそもどうしてこんな円安になったの?」


「アメリカの中央銀行(FRB)は金融緩和の正常化に向けて、金利の引き上げを実施したんだ。そのせいで、凄いインフレ状態。マクドナルドのビックマックセットは1200円を超えているみたいだよ。でも並行して平均時給は4000円を超えている。力業が得意な人たちなんだよ。」


「一方日本銀行は金融緩和を継続しており、超低金利状態が続いている。アメリカとの金利差がエグイ。日本からの輸出品は安く、輸入品の値段は高くなっている原因なんだ。日本は物価の上昇はあるけどアメリカ程じゃない。そして給与も上がらない。強引なことはやらず、ジワジワ経済を回復させるつもりなんだ。わびさび、ものの哀れ無常主義だから、さらりひらりと流れるままに進める。」


「投資家は日米の金利差が拡大すれば、円を売ってドルを買う動きが強まるのは必然。金利の高いドルで資金を運用して、利益を得ようと考えるからね。こうして円安が凄い勢いで進んじゃった。」


「黒田総裁は金利はしばらく上げないと言っている。緩やかな物価上昇と賃金アップを維持しようとしている。その内、給料も上がってくるのかなぁ。」


「値段の上がった食べ物には手を出さなくなるのが心情、これで経済が回復するとは思えない。スーパーの商品に豊富さや多様さが失われている気がするのは私だけ?」


「商品の種類を減らせば、必要物品は買わざるを得なくなる。多少割高でも、仕方なく手に取る心理的効果を考えているのかな。ガッツリ高額商品の横に値引きしたのか否か不明な商品を置くと、庶民は安いと誤解して買ってしまう戦略もある。まぁ単純に輸入品が高くて売れないから量と質が落ちたんだと思うけど。」


「給料を上げてから金利を上げることはできないのかなぁ。」


「日本人の性格から考えると、不測の事態に向けて貯蓄する人が増える気がする。財布は固く閉じられる。」


「今年の秋には円安が落ち着くと予想されていたけど、これから本当に円高に向かっていくのかしら。」


「30年前の海外旅行なんて、円高で海外の物が本当に安かった。思えばあの頃はバブルでいい思いをしたもんだ。」


「2000年以降、失われた20年と言われるほど、日本の賃金は下降している。経済がV字回復する見込みも無いし、沈みゆく日本船とも揶揄されている。この国はもはやオワコンなのかしら。」


「そう考えると、外国人に好かれる日本になるための意識改革が必要なのかもね。」


「やっぱりインバウンド?」


「アニメのコスプレしてお出迎えするか~。」


「コスプレ村とかあったら、海外旅行者の聖地になりそうだね。」


「うちの駐車場のオブジェも、バーバーモジャじゃなくて、トトロとか描いた方がいいのかもね。街の活性化に貢献できるかな。」




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