第157話 ジョジョに⑩アミューズメント風呂
「三世さん、AIの連中がゼンコウズィ堂の周辺を掘っていたら、巨大な石室を見つけたらしいですよ。どうやら、戦火を逃れた物の中では一番状態がよかったみたいです。」
「その石室の中には何が入っていたんだい?」
「それが、200年前の物であることは分かったのですが、使用方法が不明なんです。何かの容器のような形態、そう、ヤクルト社製の地雷のような形をしています。サイズは大人が一人すっぽり入れるものもあります。」
「200年前、ヤクルト社は清涼飲料水を製造する会社だったと聞いたことがある。」
「昭和ブームに沸いていたAIの連中は、時代的にも昭和平成辺りの物と判明した途端、石室に飛びつきました。」
「清涼飲料水としてはサイズが大きいし、その容器は何だろうね。」
「行動力のあるAIたちは、石室に入っていた大量の容器を並べ、露天風呂を作りました。大中小と様々なサイズの容器をニューゴエモンブロと称し、大人から子どもまで入れるアミューズメント風呂として経営し始めました。」
「やることが早いね。歴史的な物品をそんなに容易く使用していいの?」
「見つかった設計図には、石室を開けたらすぐ使えと書いてあったようです。」
「開封後は早めにお召し上がりください、みたいな感じか?」
「ただ一つ問題があって、その容器には無数の細かい穴が空いているんです。」
「お湯を入れてもすぐに抜けちゃうね。それで風呂はどうやって入るの?」
「巨大なプールにお湯をはって、その中に容器を沈めるので大丈夫です。」
「あと、ヘルメットの頭頂部に水銀灯がつけられたものが数百個見つかりました。」
「それ使えるの?」
「奇跡的に状態がよく、風呂に入る際に皆そのヘルメットを被って、水銀灯を灯らせながら浸かっています。」
「なかなかオツな光景だね。漏電したら目も当てられないけど。」
「誰かが、昭和の夜景に似ているんじゃないかと言っていました。」
「そのプールの周りに電車(ヤマノテセン)を走らせる計画も浮上しているとか。」
「それはある種の文明社会への渇望だね。シェルターで生活してきた時間が長すぎたんだ。その反動で退行現象が進んでいる。AIに見習って、俺たちも一緒に街づくりをしようか。200年前の街ってどんな形だったのかなぁ。」
☆
「ダイラさ~ん。このコンテナに入っていたクーリングタワーズの作品を全て地下に入れるって本当ですか?」
「最近、世界情勢が物騒になってきたからなぁ~。いつ北からドカンとやられるか分からないし。」
「それにしても、この作業は過酷ですよ。僕帰ってもいいでしょうか。」
「クワヤマダくんの作品も入れるからさぁ。あの三角形のやつ。」
「あれはもう違うところに埋めました。」
「さすが!クワヤマダくん、先を読んでの行動素晴らしい!」
「まぁ考えたくはないですが、いつ起こるか分からない世界大戦後、僕が作った三角木馬で助かる命もあるかもしれませんからね。」
「う~ん。それは微妙なところだが、何が役立つか分からないからね。僕のクーリングタワーズもあえて図面は最小限のことしか書かない。後世の人々が発見したときの想像に任せるつもり。石室に入れて密封しておけば500年はもつと思うんだ。」
「穴が無数に空いたクーリングタワーを後世の人々はどう解釈するのでしうかね。」
「よし!D2sで仕事が進むステンレス製スコップ買ってきたから。」
「ごはんが進むふりかけみたいに言わないでください。やっぱり手掘りなんですね。とほほ・・。」
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