第155話 ジョジョに⑧ヒーブツブツ
「三世さん、結局、初代学長とスボイ学長は、美大を設置するための資料を全て燃やしてしまったようですね。大学のガイダンスで売りつけようとしていたぴろぴろの彫刻教本の在庫の山も全て灰となった。」
「意図的に燃やしたというより、燃えてしまったということかな。新しいことをするためには前例をぶち壊さないと、魅力が生まれないからね。いいんじゃないかな。」
「ところで、三世さん、ゼンコウズィ堂にのヒブツは結局は盗みに行くんですか?」
「ごめん!実はもう見ちゃったんだよね。盗む程でも無かったから止めたよ。」
「で、何がヒブツだったんですか?」
「スボイ学長の芸術日記の最終章で書かれていた、クワヤマダっていう学生が跨いでいた鉄の三角木馬だよ。錆びていたけど、角はパキッとしていたよ。」
「ヒブツって三角木馬だったんですか?三世さんの先祖が作った作品ではなかったんですか?」
「残念だけど、第4次世界大戦の火中を生き抜いたのは三角木馬だったてことかな。ダイラさんの作品は見当たらなかったよ。」
「AIの連中が最近、腰をかがめてギコチなく歩いているのはもしかして!?」
「ヒブツブツブームが来ているんだよ。絶対秘仏は見ちゃいけないんだけど、何となく中身はバレていた。皆、ミニ三角木馬を作って売りさばいている。AIの連中は自宅でありがたがって跨いでいるんだよ。御利益御利益って、ヒーブツブツいいながらね。」
「なんそれ!って感じですね。」
「ほら、登校中の子どもたちのランドセルにもぶら下がっているだろ、三角木馬お守り。」
「色とりどりの三角が綺麗ですね。あそこまで一般化すると、本来の意味が消えますね。」
「一人の学生の趣味で作った作品が時代を経てヒブツとなり、人々のお守りとなるとは、だからアートは分からない。」
「アートの意味を再定義するのは鑑賞者である。」
「スボイ学長の芸術日記の最後に書かれていたメッセージですね。字体が古すぎ、癖の強い文字のため、AIでも訳すことが困難だったらしいです。」
「そう言えば、三角木馬ブームで思い出したけど、若い女性の間で最近流行っているあの髪形はどこから来たんだろうか。」
「不思議な髪形ですよね。江戸時代に流行った髷のようにも見えますが、昭和時代のツッパリ族のリーゼントみたく、髪を前方に筒状に押し出し、先端が丸く球体のようになっている。様々なアレンジはあるらしいけど、夜になると、その筒状と球体の髪の隙間から細かい光が発光されるんだ。」
「あれは妙な髪形ですね。いきなり流行りだしました。どこ由来なんでしょうか。謎ですね。」
「まぁ、AIと若い女子の感性は、計り知れないものがある。僕たちもあのヘアースタイルをオマージュして、三角木馬でも首に吊るして、街中を歩いてみるか。」
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