第154話 ジョジョに⑦ピラピラの彫刻秘話
BIWA法師にヤラれたシマダはスボイに一枚のメモを渡していた。
「琵琶湖のどこかにビッグモンキー現る。」
対岸まで泳ぎ、美女と出会った初代学長とスボイは腹が減っていたが妙に興奮していた。美女は大きく色鮮やかな風呂敷に入ったものを岩陰から出してきた。
「中には大切なものが入っているの。それを持って、私についてきて。」
初代学長とスボイはニヤニヤしながら、風呂敷を担いだ。目の前に見えているはずの宮殿は急に遠くになった。歩いても歩いても、美女は止まらない。険しい山道でスボイが転ぶと、美女は寄り添い励ましてくれた。それを見た初代学長もわざとらしく転び、美女の優しい言葉で昇天していた。
「ここよ。長旅お疲れさま。その荷物を持ったまま、屋敷の中にお入りください。」
「もう手が痺れてるよ。一体この風呂敷の中には何が入っているんだ。」スボイはぼやいた。
美女が屋敷の扉を開けると、中には本が山のように積まれていた。そして、その山の頂を見ると人影があった。逆光のライトせいで、その人物は黒々として見えた。
「おお。来たか。君たちはその荷物は何だと思うかね。さぁ見たまえ。」
二人が風呂敷を開けると、中には大量の本が詰め込まれていた。全て、ぴらぴらの彫刻という題名の本だった。
それは、ワシが編集した彫刻教の本だ。この屋敷に弟子になりたいと言ってくる奴に売りさばくのだが、この屋敷を出て琵琶湖に着く頃には捨てやがる。この屋敷にある山のような本は全て在庫だ。ワシの名はドウダ・スケユウだ。
「初代学長、この人がビッグモンキーじゃないですか。これなら巨体化したカワグチでもひとたまりもなくヤラれちゃいましたね。ドウダ・スケユウは彫刻界のキングコングですよ。」スボイは震えながら小声で言った。
「お二人さんよ。この在庫を売りさばく方法を考えてくれ。しょうもないこと考えたら首を飛ばすからね。」ビッグモンキードウダ・スケユウは口元を波打たせ圧をかけてきた。
「簡単です。高額の値段で単位と一緒に学生に売り飛ばせばいいっす!」初代学長は持ち前の調子のよさで軽口を放った。
「何なら、3冊セットで1000万円で、彫塑の単位を売り飛ばしましょう。」スボイも煽った。
「おもしろい。では実験してみよう。あそこのアトリエで制作をしている輩がいる。単位が足りず、ドウダ美大の卒業が危うい状況だ。」
アトリエから呼び出されたのは、鉄で三角木馬を作り自ら座るパフォーマンスをやり過ぎ、肛門の機能が壊れたクワヤマダという学生だった。
「おい、クワヤマダ、単位が足りず困っていると聞いたぞ。ワシの本で勉強したら、お前の悩みを解消してやってもよいぞ。」
「ピロピロの彫刻でしょうか。」クワヤマダは答えた。
「ピロピロはお前の肛門だろうが。ぴらぴらの彫刻じゃ。」
「僕は、先日友人が通う美大の彫刻科で発行された、ぺらぺらの彫刻を熟読しました。ぺらぺらの彫刻の著者たちは芸術への造詣が深く、後世に残る素晴らしい教本でした。それに対し、ぴらぴらの彫刻はぶ厚い割に中身が薄く、一般受けもせず、ただ思いだけ(重いだけ)で、在庫の山で登山ができると聞いております。そんな本からは学ぶべきことがありません。」
「おまえ。〇にたいのか。わしもこれほど侮辱されたら、許せんぞ。」
「僕は正論を言っただけです。僕はひろゆき・クワヤマダです。」
このやりとりを聞いていた、初代学長とスボイは恐怖のあまり、すでに漏れていた。
クワヤマダは手に持っていたガスバーナーを、ビッグモンキーが座る本の山に火を着けた。瞬く間に、火が回り、ビッグモンキーは火だるまとなった。
「うわ!これって牛魔王?あの美女はもしかしてチチ?」
「ってことは、クワヤマダさんが孫悟空?」
ピロピロの肛門で苦しむクワヤマダは角をパキッパキに際立たせた筋斗雲に跨り、痛い痛いと喜びながら去っていった。
「悪い夢を見たもんだ。」二人の手元には孫悟空の計らいで、彫刻界の良書、ぺらぺらの彫刻が載せられていた。しかし、二人は燃え上がる火の中に本を放り投げた。
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