第152話 ジョジョに奇妙な⑤秘伝のスープ

「三世さん、スボイ学長の宝箱に入っていた芸術日記は何か胡散臭くないですか?」


「そうだね、誇張も入っていそうだけど、とても興味深い描写がたくさんあって、ワクワクするよ。」


「それにしても、怪しげなスボイ学長の芸術日記をこのまま読み続けてもよいのでしょうか。」


「まぁ、もう少し読み進めてみようよ。先祖のダイラさんの作品は、どうしてゼンコウズィ堂のヒブツとなったのか知りたいしね。」


「ガーター・ヤマガタの前に突き刺さったカワグチは硬直していた。」


「皆、カワグチに自己犠牲精神があるとは微塵も考えていなかったため、この行為には感服していた。」


 ガーター・ヤマガタは、巨体カワグチをアスファルトから摘まみ抜き、放り投げた。華奢なようで怪力の持ち主だった。


 サルトル・タカダを溶かした、強烈な光を放った室外機を積んだリヤカーには、大鍋が備え付けられていた。カワグチは、その大鍋に沈んだ。


「くせーよ。なんだこの臭いは!」スボイが騒ぎ出した。


「人が鍋で煮られるとこんな臭いがするのか!」シマダが怯えた。


「ちっ違う!この臭いはトンコツだ!」初代学長は叫んだ。


 リヤカーに積んだ大鍋をゆっくり掻き回すのはダイラだった。カワグチはいつの間にか豚骨となっていた。辺りに立ち込める豚骨臭は強烈で、皆顔をゆがめていた。


「へい!お待ち!」ダイラは、ラーメン3人前を運んできた。かなりのドヤ顔だった。


「おい、カワグチ入りのラーメン食えるか?」シマダは二人を見た。


「うめー!こりゃうめーよ!」スボイと初代学長はガツガツ食い始めた。


 彫刻科の大先輩ダイラが作るものは食って当たり前という縦社会の価値観の中、シマダもきれいごとを言うのは止めた。とにかく腹が減っていた3人は最期の一滴まで飲み干した。


「先輩!うまいっす!」3人は声を揃えて微笑んだ。


「くくく。君たち、秘伝のスープを飲んだね。」ダイラはにやけた。


 ラーメンを食べ終えた3人の腹は急に膨れ、髪の毛が薄気味悪く伸び出した。3人は顔を見合った。


「カワグチ!?」


 初代学長、スボイ、シマダの3人はカワグチに変態していた。


「マジか!お前もあなたもミーも、カ・ワ・グ・チ!!」3人は声を揃えて叫んだ。嬉しいのやら悲しいのやら、3人は不穏な涙を流しながら、道端をゴロゴロと転がった。


「変態してる!変態してる!」後悔なのか、歓喜なのか分からない感情が渦巻き、カワグチラーメンを食ったことで、変態した自分たちを呪った。


「くくく。騙されたな。きゃはは!」ダイラの顔は耳の長い奇妙な妖怪に変化していた。ダイラを装った妖怪だった。妖怪はガーター・ヤマガタの方に飛んだ。


 ガーター・ヤマガタの肩に乗ったのは、ガーターのペット、イトウセ・イコウという妖怪だった。ダイラを装い3人を騙したのだ。


「たやすいものよのう。」ガーター・ヤマガタもぬらりひょうんのような爺さんに変態し、転がる3人を冷たく見つめていた。


 気が付くと、東の空が明るくなってきた。ガーター・ヤマガタはイトウセ・イコウをリヤカーに乗せ、ゆっくり西の方向へ歩き出した。


「で、オレたちはどうすりゃーいいの?」元初代学長が不安がった。


「カワグチの祟りだわ。よりによって、重いんだよなぁーこの体。」シマダがぼやいた。


「まぁ。とりあえず、この際だから、漫喫で怪しいビデオ観ようぜ。」スボイはカワグチを利用して悪いことをしようと考えていた。


 ☆


「三世さん、この話は厳しい展開を迎える気がしてなりません。スボイ学長のホラか創作の可能性もあります。」


「この続きには、カワグチになった3人はガーター・ヤマガタについていくと書かれている。僕はこの先、奴らの冒険が楽しみだよ。まだ、ビッグモンキーにも会っていないからね。」


「私はビッグモンキーには期待感がないです。」



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