第150話 ジョジョに奇妙な美大物語③自由とは?
ビデオ屋で石製仮面を被り凶暴化したサルトル・タカダから逃れようと駆け出した、〇羽美術大学初代学長と、スボイ、シマダは走り続けるだけの体力は持ち合わせていなかった。シマダが言うビッグモンキーをサルトル・タカダと闘わせれば勝機が見えるとのことだったが、二人はあまり信用していなかった。
「は~。疲れたわ。へ~。どこかのコンビニでサイダーでも飲もうよ。」
「スボイくん、サルトル・タカダが追ってくるから、もっと遠くへいかないと。」
「シマダくん、そのスーパーモンキーはどこにいるんだい?」
「ビッグモンキーだよ。本人の前で名前を間違えたら、殺されるよ。気を付けて。まぁいいや。やっぱり少し休もう。走り続けるのも馬鹿らしくなってきた。」
「あそこのコンビニはどうだ?
「暴君がこんなに走っちゃいけないな。それにしても、あのサルトル・タカダは怖かったなぁ。天井を突き破って、ガウンが引き裂かれたら、中のボディはビキニ姿だったよ。」
「あれはサルトル・タカダ先生の趣味なんだ。ビキニは、収縮が自在な素材になっている。」
「シマダくん、サルトル・タカダのこと詳しいけど、どういう関係?」
「美大時代の恩師さ。今頃、へぼい石製仮面を被ったビキニ姿のサルトル先生は街中を闊歩しているんだろうなぁ。かなりデカくなっていたから、人々の注目の的だろう。」
「そう考えると、サルトルタカダの愚行が羨ましくなるね。俺らも、ビキニを着てから、ビッグモンキーに会いに行くっていうのはどうだい?」
「さすが初代学長!ナイスおセンス!コンビニでビキニの素材になりそうなものを購入して、僕たちで作りましょうよ。そして僕たちはビキニボーイズ!」
「スボイくんはビーチボーイズ(1997年)みたいに言うんだね。素敵な発想だ!」
「ちょっと待て!コンビニの前にウンコ座りをしている人間がいるぞ!」
いがぐり頭の男の両手は背中に回され縛られ、うんこ座りをしている両足は解放されていたが、ハイヒールを履いた女に股間を踏まれた状態だった。女は鞭でいがぐり頭の男を定期的にしばいていた。
「君たちはこんな公衆の面前で何をしているのだ。非道徳的な振る舞いは私は絶対に許せん!成敗しちゃる!」
現代美術家や彫刻家を殲滅させた暴君、初代学長はきれいごとを言っていた。たまに博多弁が混ざる。
「これが私たちの自由で~す。誰も傷つけてはいませ~ん!」
男と女はハモリを利かせて、ミュージカル調に、明るく返答した。
「それは間違いだ!それは自由ではない!僕たちは認めないぞ。本当の自由は誰もがビキニを着れる世界だ。君たちはただの悪趣味だ。貴方たちは何者?」
「オレはキヨシ松本、あたいはミキ富士子よ。」
「オレは縛られることが好きだ。」
「あたいはしばくことが好きなの。」
「もしも、ミキさんが踏んでいるアクセルを踏み切ったら!」初代学長は期待した。
「もしも、叩いている鞭が劣化して引きちぎれたら!」シマダは煽った。
初代学長とシマダはにやけていた。
「そしたらオレは沖縄にでも行くかな。流浪の旅に出る。」
「あたいは蝋を垂らすわ。鞭には未練はないわ。」
「こいつらの自由は本物だ。果たして俺たちのビキニは自由なのか。支配からの卒業はできるのか!?」スボイの口は『す』になっていた。
サルトルタカダは夜の校舎、窓ガラスを壊して回りながら、コンビニの近くまで来ていたことは、この時、誰も気付いていなかった。
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