第149話 ジョジョに奇妙な美大物語②
「三世さんの先祖ダイラさんの特殊照明によってカワグチが溶けたとは歴史の妙ですね。」
「話はここで終わったわけじゃない。スボイからオーバーエイジという波動砲の能力を引き出した老人がキーマンとなったと芸術日記には書かれていた。」
「スボイくん、君はオーバーエイジの使い手となりましたね。素晴らしいパワーです。」
「何だ爺さん、ビデオ屋も困ったもんだよ。ビデオの表紙が全て老人になっちまったんだから。ところで爺さんは誰なんだ?そのみっともないガウンはカッコイイと思っているの?」
「ふふふ。糞ガキめが、私の名を聞いて驚くんじゃないぞ。私の名は、サルトル・タカダじゃ。」
「ふ~ん。知らねーな。」
「このクソガキ!教養の欠片もねーな。テメエのその力を返しやがれ。」
「分かったよ。サトル・タカダだっけ?」
「サルトル・タカダじゃ。あの悪魔と化したカワグチの奴が被っていた仮面は実はわしが作ったもんじゃ。」
「しょーもないもん作ってくれたもんだ。結局、オーバーエイジはカワグチの好きなビデオの表紙を老化させただけで、カワグチが崩壊し気化したのは、あの特殊照明の水銀灯のお陰だからね。」
「でも、カワグチにショックを与えたんだから、それなりに成果があったじゃろ。」
「サルトルさんは一体オレに何をさせたいの?」
「カワグチは気化しただけで、まだその辺を漂っておる。石製仮面も見当たらないところを見ると、第2の攻撃があるはずじゃ。」
「ええ!まだ戦うの?オレは真っ平御免だね。個室でニヤニヤしている初代学長は放っておいて、逃げるわ!」
その時、漫喫に一人の男が現れた。スボイは口を『す』にして目を細めた。
「ちーす。何だここのビデオ屋、高齢化もんばかり!」
「シマダじゃないか。わしを覚えておるか。」
「お!サトルタカダ先生!」
「サルトル・タカダじゃ。シマダ、お前は何しにここへ来た。」
「鋳造の手伝いが面倒臭くて、体調不良ってことで逃げ出したんだ。」
シマダは油まみれのロン毛で、牛乳瓶の底のような厚さのレンズと黒縁のフレームはサイズが合っていなかった。頭上にはどこかの工事現場で拾ってきたのか、赤いコーンを載せていた。
「スボイ、あいつは怪しいぞ。あの赤いコーンの下にもしかしたら、仮面を隠しているかもしれない。オーバーエイジ波動砲で、あやつのビニール袋に入っているビニ本を老化させよ。」
「何でだよ。めんどくせーな。」
スボイは天邪鬼を装うが、本来はとても素直な子であった。サルトルタカダの指示通りにオーバーエイジ砲をシマダの本に向けて放出した。
「スボイさん、そんなショボイ攻撃は効かないですよ。だって、僕のビニ本はすでに老化していますから。」
そらみたことかとスボイはサルトル・タカダを見た。サルトル・タカダはカワグチと同じ仮面を被っていた。お気に入りのガウンは、巨体化したと同時に張り裂け、サルトルの頭はビデオ屋の天井を突き破っていた。
さすがの初代学長も店内の顛末に気付き、個室から飛び出してきた。スボイとシマダは急な展開に意気投合し、老化もんのビデオを袋に無造作に詰め込み、店を飛び出した。
「スボイくん、これからある場所に行こう。そこにはトンデモないビッグモンキーがいる。そのモンキーを連れてくれば、石製仮面を被った悪魔も倒せるはずさ!」
「シマダくんの言うことは怪しいが、今はそんなことは言っておられない。オレたちをそのビッグモンキーとやらに会わせてくれ。オレが軽く面接をしてあげるよ。」
「モンキーは上から目線の奴は瞬殺する能力があるから、スボイくん気をつけてね!」
初代学長、スボイは言動が頼りないシマダのあとについて、不気味なリズムで走り出した。
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