第145話 ポンコツ美術大学①昭和タイプAI
ゼンコウズィ堂は長野県軽井沢町に設置されていた。第4次世界大戦では、日本にある70機の全ての原発が攻撃された。令和7年までは原発は54機だったが、その後、エネルギー問題解消のため、原発を急激に増やしていた。原発が無く山に囲まれていた長野県は核シェルターが数多く作られ、日本の人口の半数は、長野県に避難し人々は数十年間をシェルター内で過ごしていた。皮肉にも、第2次世界大戦中につくられた長野市松代大本営は、第3次世界大戦中、日本の中枢部が入ることとなった。首都は東京から長野市松代となっていた。人口減少が著しかった松代には人が溢れ、近所の小さな商店や温泉宿は見たことも無い大行列ができていた。
核シェルターから出た人間が見つけた、原爆ドームを象ったドーム内にあったダイラの作品はゼンコウズィ堂にヒブツとして管理されていた。その存在を目にしたものは、すでにこの世にはおらず、日々神秘性が高まるばかりであった。
ゼンコウズィ堂の敷地内からは、ダイラの作品だけではなく、数多くのガラクタが発見されていた。全て200年以上前の物品であることから、長野県軽井沢町に美術大学らしきものがあったことが分かった。〇羽美術大学と彫られていた巨大な石柱が見つかり、正門に使われていたことが分かった。〇の部分は欠損していた。
「三世くん(ダイラの子孫)、今の時代、ヒブツがこんなに人々の心を動かすなんて思った?」
「あいつらは、人なのか?半分はAIだよ。AIの連中は、妙に人間臭さを出すんだよ。しかも、結構古い人間のタイプなんだよね。」
「義理人情、根性や忍耐、成せば成る、全員野球とか、意味不明なことを言っている奴がいたけど、あれってAI?超ナウいって何?」
「知らねーよ。200年以上も前の昭和タイプだわ。人間もややこしいもの作ったもんだ。第4次世界大戦は結局はAIの暴走から始まったからね。」
「AIの連中はやたら能力値は高いんだけど、ポンコツ具合が半端ない。」
「200年前の人間たちの、ポンコツ値を過って学習したんだよ。AIは人間らしさを誤解して成長した。」
「超優秀な奴をまとめてAIに学習させるから、そんなことになるんだよ。」
「大体、超優秀な奴らは、超凡人と一緒にいるから、成立するんだよ。」
「お互い補完関係で、人間社会は成り立っている。」
「AIのポンコツどもが調子に乗ってポンコツを増産する。2222年はポンコツだらけ。」
「学者たちは、人類の能力は200年前と同じか、退化をしているなんて言うけど、仕方ないよね。」
「この〇羽美術大学だって、あの時代に本当につくる必要あったの?考古学的には第三次世界大戦中だったんでしょ。昔の人間のやることはよく分からん。」
「気合と情熱と彫られた石碑も出てきたみたい。クネクネという擬音もあったみたいだけど、それは誰かの落書きなのかなぁ。」
「200年前の人間は精神力を真面目に信じていたようだね。ドームに隠されているヒブツももしかしたら、そういう類のものだったのかなぁ。」
「観たくなってきたなぁ。よし、いいこと思いついた。こっそり見て盗んじゃおうか。」
「バチが当たるよ!なんていうのはAIくらいだからね。AIたちに見つかったら怖いけど、三世にはお宝を盗む才能があるからね」
「200年前にルパン三世っていうアニメが流行していたんだって。うちの爺ちゃんが、それに憧れて俺に三世ってつけたらしい。」
「ダイラっていうご先祖さんも、アニメ好きって石板のQRコードの情報に書いてあったみたいだし。遺伝なんだね。」
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