第140話 漂流大学⑦ピンクフロイド
「ダイラさん、あれは本当にピンクの像なんですか?」
「クワヤマダくん、雲の隙間から見える奴は像だよね~」
「せんぱい~。僕は巨大なブタにも見えます。像の鼻のように伸びているものは、虎ロープ?」
ピンク色の物体は徐々に下降し、上空をダラダラと舞っていた。ダイラと一緒にいた我猛が、見慣れない女性と話込んでいた。
「我猛くん、そちらの方は誰?」
「大学のご近所に住んでいる方で、趣味で絵を描いているそうです。構内の購買で画材を購入しているときに、大きな揺れとともに取り残されたようです。」
「あなたたち、あの空に浮かんでいるものが見えるの?」
「見えますよ。」
「あれは、この大学ができる前からこの地に住んでいる妖怪よ。昔、ここは森だったの。森を開拓し家がたくさん建ったわ。この地の妖怪はたちが悪くて、なぜか風呂と井戸の水をピンク色に染めるイタズラをするのよ。いつの間には、人々はピンク
「縄文時代から生息するトトロみたいな妖怪なのですね。」
「この大学では、文化祭になると奇妙な神輿を担いでいたわよね。」
「ええ、でも、もう無くなったかもしれません。グランドを見たら分かりますが、ご神体は切断されています。」
「だから、妖怪ピンク
「ということは、あの男神輿は妖怪ピンク風呂井戸と何か関係するのですか?」
「そうよ。ムサビにはあなたたちみたいに、童心をもっている学生がたまにいるのよ。童心がないと妖怪が見えないの。大学が建ったばかりの頃は、やっぱり飲み水がピンク色になることが多かった。ある日、彫刻科のある学生が、妖怪ピンク風呂井戸をアトリエで見つけたのよ。」
「メイがトトロを見つけたように?」
「その学生は、何を考えたか、妖怪におしっこをかけたの。」
「その行為は童心だなぁ。子どもは小動物におしっこかけたがるからね。」
「そしたら、妖怪ピンク風呂井戸は蒸発して消えた。それからというもの、度々、構内に現れては、その学生がおしっこをかけて撃退したの。でも、大人は見えないでしょ、周りの学生は急に場所をわきまえずおしっこをする童心の学生を不審がったわ。」
「激ヤバな奴ですよね。イタイわ~。」
「でも、いつしか、そのおしっこのお陰で妖怪によるピンクのイタズラが無くなったことに気付き始めた。彫刻科の学生たちは、ピンク風呂井戸の鎮魂の意味も込めて、例の下腹部をデザインして神輿にすることにしたの。」
「それで、下腹部のデザインが伝統的になったのですね。そんな歴史があったとは知らなかったなぁ。」
「昔は、先端から妖怪を退治した聖水が、噴水のように飛び出ていたのよ。」
「歴史に意味ありなんですね。子どもはちん〇とうん〇が大好きだから、童心が多い彫刻科の低俗な発想だとばかり思っていたけど、見方が変わったなぁ。」
「グランドで切断された下腹部を基に戻せば、ピンク風呂井戸も成仏するかなぁ。」
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