第137話 漂流大学④切断された神輿
「我猛くん、磔にされていた3人が言っていた神輿を見に行ってみよう。」
「グランドにあるらしいけど、ちょっと見るのが怖いです。」
「男神輿と言えば、いつの間にか彫刻科の伝統になっていた。でも、とうとう伝統を崩した輩がいるらしい。凄い奴が出てきた。」
「そもそも、新しい美を創造する美術大学で、男性の下腹部を御神体とし数十年も伝統を受け継ぐこと自体、不思議な現象ですよね。」
「結局、皆、伝統にかこつけて暴れたいだけなんじゃないかなぁ。日々、悶々とした制作活動をしているから。地方から出てきた田舎者は、一瞬で洗脳されモヒカンにされていた。男神輿に参加しないまともな学生は、文化祭の前後1か月は居心地が悪いものだけどね。」
「今の時代、男女の性を強調する時点でアウトだから、男神輿を崩壊させたことは、時代の流れからしてアリかもしれない。」
「グランドに行くのが怖くなってきたじゃないか。もしかして、アベサダ事件に関連する感じ?」
「下腹部、局部という表記はアベサダ事件後から、始まったらしい。」
「現代のスポーツ中継では役立っているよね。どうやら下腹部にボールが当たったようです。とアナウンサーはクールに言える。聞いている方も、スルリと聞き流せる。」
「ち〇ち〇にボールが当たりました!なんて言われたら、吹き出しちゃいますもんね。」
「我々は間接的にアベサダ事件の恩恵を受けているなんて、世の中、分からないものですね。」
「多分、アベサダとは意味合いが違うと思いますが、男性が特権を握っている風潮のある彫刻界に風穴を開けたかったのではないでしょうか。時代はLGBTQですから。」
「そうだよね。男・女という限定的な性区分を見直すのは、美術・芸術界こそが先走りたいものです。性はグラデーション、ユニバーサルなのだから!」
ダイラと我猛はグランドの中央にある、異様な造形物を見て驚愕した。
「やばいもん見ちゃったね。」
「文字で書くには厳しい内容なので、少し緩和させた表現を頼むよ。」
「巨大なザリガニが、ご神体を切断している。切断面からは赤い水柱が天にも昇る勢いで噴出している。」
「これでも、やんわりとした書きっぷりだと思う。我猛くん、ありがとう。」
「その周りにいる、モヒカン族のことは書かない方がよさそうだね。」
「数人、ラーメンマンもいますけど。」
「ザリガニ神輿は、過去にも何度か旧男神輿に接近していたようだよ。」
「ご神体に疑問をもっていた学生たちがいたのですね。」
「確カニ、ザリガニのボディは赤くて下腹部にも見えなくもない。」
「擬態ですか!」
「男双子神輿として、接近した瞬間に回転して、ハサミで切断する計画だったらしい。」
「計画は実現できなかったのですか。」
「彫刻科の荒い手仕事により作られたご神体は、担いでいる途中で土台から下腹部がもげて落ちたり、担いでいる最中の衝撃波により勝手に崩壊することが多かったみたいだよ。」
「切るまでもなかったということ?自滅系?」
「それで、近年はご神体を横に寝かし、担いでいる際に崩壊しないように固定しているみたいですよ。」
「近年は巨大化していて、1号館を抜けて、商店街へ繰り出せなくなったとか・・。」
「抜けなくなったのですね。」
「ザリガニ神輿の周りで、小下腹部を大量に並べて踊っているのは誰ですか?」
「ヤヨイさんだよ。」
「グランドは地獄図絵だけど、新しい時代の幕開けだ。」
「そう言えば、空が少し明るくなってきたような気がする。」
「赤い血柱の影響だよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます