第126話 不運!たけし城と怨霊
「クワヤマダさん、暑い日が続いていますが、お体は大丈夫ですか?」
「おっ!ヤヨイの部屋にとうとうクワヤマダくんが来た!」
「最近の暑さは尋常じゃないっす!でも、毎日筋トレだけは欠かさずやっています。」
「一体そんなに鍛えてどうするの?」
「復活!風雲たけし城に出るんですよ!」
「え!マジで。」
「腹筋が洗濯板と化しているコウジくんも出ます!」
「僕も出ようかなぁ・・。」
「私も応募してみようかしら。城と言えば、700年間続いた武家社会の象徴ですね。」
「不運な時代でした。」
「ヤヨイさん、歴史もお詳しいんですか?」
「荒くれ者の武士たちが唯一手を出さなかったものは何かご存知?」
「殿?たけし?」
「天皇家よ。世界最古の王家。武家に散々利用されたけど、滅亡はしなかった。なぜ?」
「フライデーと一悶着?」
「滅亡させたら、祟りがあるからよ。天皇家は神武天皇から始まったとされているけど、日本の神々の末裔です。
「天災、天変地異が非常に多い日本は、科学が発達していない時代には、祟りと畏れとの関係性が強固になるきっかけとなるには最適な環境だった。」
「一説では卑弥呼は日食のときに殺されたと言われている。」
「責任をとって自害という説も・・。」
「予言を外して、エセ祈祷師が八百万神を怒らせたと解釈された可能性がある。」
「自然界の大ボス的存在が天皇家なのですね。」
「後白河天皇との戦いに敗れた
「詳しい解釈は省きますが、白河法皇の不倫の子(崇徳上皇)が、天皇になれず、民間の強力な武士(平・源)を味方につけた後白河天皇により闇討ちされ、島流しにされたという、骨肉の争いがあったという悲しいお話です。崇徳上皇側にも平・源の兄弟がついていたので、モノホンの豚骨ダブルでお願い!みたいな状況です。」
「クワヤマダくん、分かりやすいというか・・。」
「現代では、そんな絵空事と言って片付けてしまうでしょうが、明治天皇は即位の礼際、京都に白峯神社を創建し、崇徳上皇の怨霊を700年ぶりに京都へ帰還させ和解をはかったの。20世紀に入っても怨霊を鎮めることを大事とする考えがあるの。」
「敗戦後、天皇を残したのは、アメリカの日本文化の分析官が、日本を植民地化するためには、天皇を残すべきと助言したとか。」
「アメリカにとっては、祟りも畏れも怖くない。不可思議なことを信じている日本人の方がずっと怖いのだろう。天皇を殺すと、日本人は何をしでかすか分からない。自力で復興させるためにも、残したのでしょうか。」
「世界最古の王朝が残っていることを研究し、自国でも生かしたかったのではないか。」
「で、この話はどこにオチがあるのでしょうか。」
「そんな国にいることを忘れてはいけないという話なのよ。」
「TAROさんが、芸術は呪い、呪術だと言っていたわよね。この国で生きるためには、八百万への畏敬の念がないと受け入れられないのよ。」
「TAROさんの作品は何でもかんでも顔がついていたのは、八百万的な感じ?」
「海外の輸入だけではだめで、そこに和式の畏怖がミックスされないと、受け入れられないということ?」
「この国は独特な風土や風習が実は色濃く残っている。」
「ヤヨイさんが、突き抜けている意味が何となく分かりました・・。」
「僕らも八百万の一部としてのアートをつくる必要があるのでしょうか。」
「それはねらうことではなく、そうなっていくことで、この国で存続していくのよ。私たちは怨霊として、しばらくこの国に残るわ。TAROMANもTAROさんの怨霊よ。」
「こわ~い・・。でも楽しい。ヤヨイさんやTAROさんを怒らせてはいけないね。」
「日本怨霊芸術会員です。入る?」
「ご遠慮させていただきます。」
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