第122話 君の名は!?
「ヤヨイちゃん、怖い話はそこまでにしませんか。」
「あら、
「ゲッ!もしかして、松澤宥さんじゃないですか!ヤヨイさんとはどういうご関係ですか?」
「私の師匠よ。」
「ゲゲッ!本当ですか?」
「ヤヨイちゃんは若い頃、僕の家によく遊びに来ていたよね。ヤヨイちゃんはやっぱりしぶとかったね。あの頃から理解不能なことを言っていたけど、相変わらずだ。」
「世界のヤヨイになりました。」
「今年は、生誕100周年ということもあって、諏訪の界隈は少し、盛り上がったみたいだね。でも、僕の作風は地味だから、ヤヨイちゃんほど一般受けはしないんだよ。そもそも、オブジェを消せなんて言っちゃったもんだから、小難しくなっちゃったよ。ヤヨイちゃん、今日は、同じ年のお友だちを連れてきたよ。」
「
「ゲゲゲの水木しげるだ!」
「ということで、今日のヤヨイの部屋は僕ら二人がお客さんということでどうだい。」
「いいわよ。お二人、生誕100周年、おめでとうございます。」
「すでに死んでるから、おめでたくないんだけど。ははは・・。」
「私が妖怪漫画家になるきっかけを作ってくれたのは、近所の、のんのんばぁと呼んでいた婆ちゃんなんです。ヤヨイさんは、その、のんのんばぁによく似ている。」
「水木さん、あまり余計な言うと、全身穴だらけにされますよ。」
「ダイラさん、穴ではなく、水玉よ。」
「僕と水木さんの共通する話って何だろう。ヤヨイちゃんは分かる?」
「どうせ、妖怪話でしょ。」
「水木さん、手長足長妖怪はご存知ですよね。」
「ああ、人さらい、人食い妖怪と言われておりますが、私は手長と足長をコンビ妖怪として描きました。地方にある巨人(でいだらぼっち)伝説や、中国から伝わった伝説とも言われております。」
「諏訪では、手長足長は諏訪明神の家来です。手長と足長の夫婦の神で、手長足長を祀る手長神社、足長神社がありますよ。諏訪の国つくりを手伝ったという説もあるんです。」
「手長神社は映画『君の名は。』のモデルになった神社です。神社だけでなく、諏訪湖や御神渡り伝説など・・。」
「ダイラさん、お詳しいのね。上社の男神(建御名方神:タケミナカタノカミ。諏訪明神とも)が、下社にいる女神(八坂刀売神:ヤサカトメノカミ)に、夜な夜な会いに行く時に凍った諏訪湖を歩いたとか、夜明け前に帰る時に急いで氷上を走ったため轟音とともに亀裂が出来たなどといった話があるわよ。いずれにせよ男神の通い路だった。」
「ある意味ショートカットのための道?男はしょうもないですね。」
「神様が通れるんだから俺だってと言わんばかりに、酔った地元の若造たちが、何人も湖の底に沈んだことは補足しておくわ。今日は怖い話はしませんからご安心を。」
「最近は、御神渡りが見られないとか。」
「御神渡りが発生するためには、湖が全面結氷する必要がある。600年前から気象状況と兼ねて記録を取り始めているが、やはり最近は温暖化の影響で発生しにくくなっているらしい。」
「600年間気象を観測しているのは、世界的にも珍しいとネイチャーでも特集されていた。しかし、幕末から明治時代にかけて約30年間観測がされていなかった時期がある。」
「明治維新に付随して、廃仏毀釈とか文化財の破棄の空気感で、迷信まがいの御神渡りにおける気象観測なんぞダサいということで、観測の中断期間があった。」
「古来から続いているものを、現代の合理的な視点で当てはめると、理解に苦しいものはたくさんありますもんね。」
「特に日本の神仏に関わる行事は歴史が古すぎて、誰も深い意味を知らずに継続することだけに力を注いでいる。」
「続けないと祟りや呪いがあるからよ。」
「ゲ!」
「呪うわよ。」
「ゲゲっ!」
「君の名は?」
「のんのんばぁだ!」
「ゲゲゲ!」
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