第120話 怪奇 ヤヨイの部屋③

「あなた猫はお好き?」


「そうですね、かわいいとは思いますけど。」


「私の近所に、猫の多頭飼いをする家があったの。昔はそういう家が多かったの。」


「今は10頭以上買う場合は、地方自治体にもよりますが、知事へ届け出をしないといけないきまりになっていますね。」


「東京から、ある家族が引っ越してきたの。私と同じくらいの娘が二人と、学者まがいの父親が来たの。私たちの村はよそ者には厳しかったわ。」


「夜になると、近所のガキどもが、その家に行っては、いたずらをするの。すると、明くる日、その娘たちは、昨晩、お化けかなんか出たと言って、私たちに話をするの。私たちは、そのお化けの正体を知っているから、クスクスと笑うのよ。」


「ヤヨイさんはそのいたずらを一緒にやったのですか?同犯ですか?」


「私はくだらないことはやらない主義よ。その娘たちには、クラスの鼻たれ男子どものイタズラと直ぐに伝えたわ。」


「ヤヨイさんは平和主義なんですね。」


「LOVE&PEACEよ。そして、ある日の晩、猫の群れがその娘たちの家に集まったの。」


「猫は群れでは行動しないですよね。」


「イタズラをしようと集まった男子がその様子を事細かく見ていたの。」


「で、その猫の群れはどうなったんですか?」


「次の日、山奥の川に微塵切りされたものが散乱し流されたよう。」


「その家の誰かが、大きな袋を担いで、山奥に行ったところを男子たちが見ていたの。男子たちは教室で大騒ぎ、その日からその娘たちを見る目も変わったわ。」


「その出来事は一気に村人に知れ渡り、その学者まがいの父親のもとに、事実を問い正そうと、村役場の職員が出向いたのよ。」


「ホラーですか・・。」


「村役場の職員は驚愕したらしいわよ。その家のドアを開けた瞬間、異臭が漂い、壁面には黒ずんだお握りサイズの斑点が所々に塗られたいたの。そして、中から娘たちが出てきたようだけど、到底いつも見ている容姿では無かった。口の周りは血みどろ、両手には猫のちぎられた手足・・。」


「ホラーですね。聞きたくないですが、お父様は?」


「すでにいなかったのよ。」


「まさか!」


「あの川に流されていたのが、お父様だった・・。」


「もうこれ以上は耐えられません。」


「家にお金も入れず、当てにならない論文を書いていた父親は、時々、娘たちに暴力を振っていたらしいの。業を煮やした姉が、父親が寝ているときに・・。」


「でも、子ども二人でできるんですか。」


「入院していたと思われていた妻が帰ってきていた。」


「猫の群れは?」


「餌付けしていたらしいの、その群れを男子たちは見たらしい。貧困でタンパク質を摂る為にやっていたよう。」


「その後、その家には誰も住まなくなったわ。日本建築にモダンなアトリエが増設された素敵なお家だったけど。黒い斑点は、その後、いくら掃除しても落ちなかったみたい、夏休みになると、近所の子どもらは、隣のドロドロ真っ黒地血色介まっくろぢいろすけ出ておいでと、その家と斑点に名前をつけて、周辺で肝試しをするようになった。」


「どこかで聞いたことのあるフレーズ・・」


「もちろん、黒い斑点との関連性を確認しに、私のところに何度か警察がきたことは付け加えておくわね。」







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