第106話 高齢化×奇獣未来を見た

「TAROさん、僕はTAROMANに出てくる隊員の高齢化にはちょっとガッカリしました。」


「ははは。子どもが視聴する番組だったら、若いイケメン俳優が隊員なんだろうけど、TAROMANの視聴者層は40歳以上の人間がほとんどだからね。隊員を高齢化させるのは必然だよ。」


「町内会で、趣味の手品を披露している、定年後再雇用で働くおじさんにしか見えない。でも、あれが僕たちの未来なんだろうなぁ。ナレーションも妙に落ち着きがあり、熟練の人に違いない。心に沁み込んじゃう声なんだなぁ。」


「ゴミ箱を漁った後に、奇獣未来を見たと戦うシーンは、相手に勝とうとする無謀さは陰を潜め、面白く見せようとするオヤジ特有の余裕すら見えたもんね。」


「隊員のコスチュームも100円ショップにすら売っていない代物ですよ。飲み屋のママの手作り感が出ちゃていますよ。私、昔、手芸部だったんだぁとタバコを吹かしながら、オヤジたちとだべるママの光景が目に浮かんじゃって・・。唯一、若い女性隊員が、凍りつくようなオヤジギャグをかまされていないことだけを願いますよ。」


「ダイラくんは、もし自分の未来が見えたらどうする?」


「TAROさん、妙な質問をしないでくださいよ。僕は、受験生やカップル、少年や社長のように無気力にはなりませんから。」


「どうしてだい?」


「それは、明るい未来しか見えませんから。僕は、みうらじゅん賞を受賞して、このダイラ物語も世界で空前のベストセラーになるのですから。」


「その未来は誰かに見せてもらったのかい?」


「この作者の空想ですよ。何千何百回もそう聞かされている内に、そんな未来が本当にやってくると信じてしまったのです。」


「なんだそれは!この作者はもしかしたら奇獣なんじゃないのか!?」


「ひょ!ひょっとしてそうかもしれません!」


「未来を見たのヤツメ!この世界にまで忍び込んできたのだな!」


「そう言えば、最近、とあるアーティストのパーティーに、特殊照明を持ってサプライズで乱入したのですが、今から振り返ると僕と隊員の行動がダブります。」


「相手を楽しませる境地という視点で見ると同じかもしれないな。」


「奇獣未来を見たの話は、視聴者に未来の日本を暗示させている可能性がありますね。零細企業の赤字社長も再三、TAROMANにビルを壊され、廃人になりかけていましたもんね。努力が報われない社会・・。」


「あれが、これから日本に起きる未来なんだ。(すでに起きている未来)TAROMANのでたらめな攻撃を予想できず、芸術は爆発だ!攻撃で、奇獣未来を見たは木っ端みじんになっていたけど、あれは、未来を見ることすら不可能になるという、これからの日本のメタファーだった・・。」


「一度死んだ人間になるってことですね。ゾンビ的な歩みを勧める話だったのですね。」


「まぁ、明るくいこうよ、ゾンビと言えばマイケルジャクソンのスリラーだよ。ダイラくんもお盆にイベントがあるんだろ。ゾンビの衣装でゾンビダンスをしながら特殊照明を振舞ったら、イケてるぜ!」


「TAROさん、今日はこういう話で終わっていいのですか?」


「TAROMANは正義の味方では無いことはよく分かった。現代社会に生きる君たちへのエールのようで、茶化しのような、強烈なメッセージがあるような無いような、モヤモヤした気持ちで視聴するマッドな5分間なんだよ。こんなテンションが心地よい。」


「芸術は心地よくあってはいけないと言ったのは、TAROさんですからね!」


「オレ、そんなこと言ったっけ?」



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