第105話 TOKORO×奇獣歓喜

「ららら・・ふふふん~♪」


「クワヤマダくん、急にどうしたの?」


「せんぱ~い、所さんのYouTubeの配信が終わってしまったことが残念で・・。」


「所さんって、元ミュージシャンだったよね。」


「現役シンガーソングライターです。ほぼ毎日、自作の曲を作って配信していました。僕は所さんの歌がとても好きだったんです。所さんは、テレビ司会者としては超売れっ子でしたが、歌の方は鳴かず飛ばずのままでしたけど。」


「情熱大陸で所さんが出演した回を覚えているよ。自分のために歌を作っていると言っていた。車でかける曲は、自分が今まで作った歌しか聞かないという徹底ぶりには、驚いた。視聴者はそんな所さんの意外な一面に笑っちゃったと思うよ。」


「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ。」


「お!出てきた!TAROさん!」


「君たちは、TAROMAN第2話、奇獣歓喜を観たかな?」


「もちろん、観ました!」


「歓喜のトゲトゲ攻撃に打つ手を失くしたTAROMANの反撃を見たか?」


「だから、見ましたよ。」


「長く伸びたトゲを抜いて、太古の太鼓のように歓喜を叩いただろ。不気味なリズムで・・。オレ、ドラムやるからと、一緒にバンドを組んだはいいけど、どのタイミングで脱退を促したらいいか迷うタイプのリズムだっただろ。」


「良いか悪いか判断が微妙になるリズムでしたね。」


「あんなリズムだと、叩かれている奇獣歓喜もまいっちゃった。結果、メンバーでバイトで苦労して購入した中古のドラムセットが壊れ、人間関係も破綻しかけた状態になった。」


「あんな奴に叩かせたばかりに・・。ドラムが壊れたことを理由に、バンドを解散して、ドラマーの奴とは別れて、他のメンバーとは後でひっそり再結成しようと、口裏を合わせるみたいな。」


「社会でもよくあるパターンだな。不思議なリズムで和を滅茶苦茶にして、自分勝手な振る舞いをした割りに、それ程新しいことはできなかったせいで、次から、新規プロジェクトに呼ばれなくなるタイプ。」


「なるほど。奥が深いです。だから、TAROMANは奇獣歓喜を退治した後、歓喜のトゲでビルの窓を一つずつ丁寧に突っついて破壊していたのですね。」


「TAROMANはいたのさ。」


「不気味なリズムで叩き倒すかと思いきや、再び芸術は爆発だ!で時間を短縮させてお茶を濁しましたよね。話の筋で考えると、それは正義なのか、悪なのか、自分に問いかけているシーンだったのですね!まぁ、視聴者目線で考えると、芸術は爆発だ!のパターンを定着させた方がいいと言う判断だったのかな。」


「周りのメンバーから脱退を促されていることに気付いたドラマーが、最後のあがきでドラムを滅茶苦茶に叩いたあと、リーダーからお前とはやれないと最後通告を言い渡された瞬間だね。」


「所さんも、あまりにも自分の曲が評価されないことに、いじけモードに入っていたんじゃないかな。YouTubeが広告をつけることに腹を立てて、辞めたと報道では言われていたけど、膨大な売れない曲を目の前にして、一瞬我に返っちゃったんじゃないかと推測する。」


「このダイラ物語も、作者の自由な振る舞いで突っ走っていますけど、自分の歌を歌えばいいモードでどこまで行くのでしょうか。」


「自ら壁を作らないこと、いじけないこと、それが歌い続けるポイントだろう。人間は弱い生き物だから、必ず自ら壁をこしらえるもんだよ。」


「せんぱ~い!DAIRAMANの今日の名言は、自分で壁をこしらえるな!ですね。」


「クワヤマダくん、まとめてくれてありがとう!」

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