第102話 D×耳派ゴッホ

「TAROさん、さすがにゴッホとの対談は疲れましたね。」


「あいつさー、大人しそうにみえて、が強いんだよなぁ。」


「最後に付き合っていた彼女のよさを連呼していましたもんね。」


「本当にあいつはしつこい!この対談で分かったことは、ゴッホは耳派だったことだな。」


「ゴッホさん、彼女の耳に執着していましたよね。耳がイイ!って・・。そう言えば、日本人作家で耳を大量に作った三木さんも耳派ですか?」


「三木くんは、耳に選ばれたとか言っていたよな。耳は癖になるんだよ。」


「TAROさんはですが、耳派とのは何ですか?」


「目はS(サディスト・サディズム)で、耳はM(マゾヒスト・マゾヒズム)だ。」


「妙に腑にあちるんですが、科学的な根拠がないので、TAROさんの感想ということでいいですよね?」


「ひろゆきみたいなこと言わないでよ。ムンクくんがいい例だよ。叫んじゃっている絵があるでしょ。」


「はい、ムンクの叫びですよね。」


「あれはムンクくんが叫んでいる訳じゃないんだ。大地から聞こえてきた叫びを耳を塞いで耐えている絵なんだよ。」


「そうなんですね。そう聞くと更にキツイ絵です。」


「ムンクくんも、幼少時代から不幸が続き、イケメンで高身長でモテモテコースだったんだけど、彼女に結婚をせがまれて、自殺未遂するんだよ。その時も耳を打ち抜こうとして、左手を負傷したらしい。」


「モテて羨ましい話ですが、本人は望んでいなかったんですね。自分だけが幸せになることはできないというドMコースということですか。」


「それが耳派だ。」


「耳は女性器の隠喩とも、社会との接点とも昔は言われていた。村上春樹の小説にも耳を性器に関連付けるシーンが出てくる。耳を切るということは、社会との断絶を意味する。ゴッホの野郎が、彼女に自分の耳をプレゼントしたのも、社会と断絶した僕は、あなただけを見ているというメタファーだったと思うよ。」


「ゴーギャンに耳のことをバカにされて、ドM魂に火が着いたんですね。」

「鳥獣戯画を作った、明恵上人も耳を切っていますよね。」


「あいつは、色んな宗教に手を出し過ぎた。Mコースの奴らは受け入れることが大好きだろ。でも、人間にはキャパがあるから、限界を超えると、ぶっ壊れるんだよ。」


「ゴッホも基本的には自ら苦しい方向や努力を選ぶドMだ。その点、オレやダリちゃんみたいに目派はいいだろ。」


「どこがですか?」


「攻めてるでしょ。目派はでっせ!」


「確かに、全てをはじき飛ばしているイメージがありますね。」


「ダリちゃんなんか、自分をスターと崇めてくれていた仲間を捨てて、アメリカで大儲けしたからね。」


「ドSですね。」


「TAROさんも、強烈な反対を押し切って、太陽の塔を建てましたもんね。」


「まぁ、S・M、どっちにしろ、ことが、芸術家にとっての命題なんじゃないのかな。」


DAIRAMANの名言

 「芸術家は、SでもMでも、突き抜けることが大事!」




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