第92話 カワイイはオジサンを救う
「せんぱ~い、ボッティチェリのルネサンス展観に行きました?」
「ルネサンスの美術にはあまり興味がもてないんだよね。」
「僕もそんなに興味は無かったんですが、チケットをもらったんで、勢いで観てきました。」
「クワヤマダくん、ボッティチェリやルネサンス時代に描かれている、赤子や天使の顔見た?」
「は~~見ましたけど、あまり印象に残っていないです。」
「全然、かわいくないんだよね。」
「そう言えば、近くで見ていたカップルが、この天使ブサイクじゃね?と毒づいていました。」
「西洋人が描く赤子や天使って、顔がやたら大人びてるんだよ。きっと、カワイイという概念がそもそも無いんじゃないかなぁ。身体に対しての顔の成熟度が半端ない。赤ちゃんのボディーにクワヤマダくんの顔がそのままついている感じ。」
「せんぱい~。酷いなその言い方は~。でも、そのカワイイ概念で言うと、西洋人の描く赤子や天使は、キモカワイイか、ブサカワイイにカテゴライズされると思いますよ。」
「ブサイクじゃね、と毒づいていた女性も、こいつは結構ブサカワ?とか言っていましたもん。」
「カワイイは凄い概念だよね。ゆるカワ、カッコかわ、キレかわと何でも包み込んでしまう。」
「クソかわもありますよ。」
「糞すら包み込む!?とにかく、何でもカワイイって言ってしまえば、自分が優位に立てる。理解はできないけど、生理的に、感覚的に、心は反応しているというメッセージなんだろうね。」
「日本人は、人前で本心を言うことが苦手ですよね。場が乱れたり、空気が読めないことに対して敏感です。同調圧力にすぐに屈します。その中で、生まれた概念がカワイイなんじゃないですかね。」
「カワイイと言った瞬間に、淀んだ空気がピンク色に変わる。」
「写真を撮るときにピースするヤツだね。一人だけコマネチとか、全く違うポーズすると浮く。ピースっぽければ、肘を上げて角度を変えたり、ピースの間から目を覗かせたり、顔の前に立てて小顔効果を発揮させたり色々できる。」
「ダイラさんのピースは独特ですけどね。バルカンでしたっけ?バルタン?」
「ダイラ物語の作者が以前間違えていたサインだよ。(※第20話バルタンの涙参照)クワヤマダくんも知っているじゃん、バルカンサイン!」
「現像した写真を見ると気付くタイプのピースですよね。なんだ、この特殊なピースは?みたいに・・。」
「クワヤマダくんは、若い子にカワイイって言われたい?」
「それは、微妙ですね。キモカワとか言われたら、どう反応していいか分からないですよ。」
「自己紹介で、ゆるカワのクワヤマダです。と象のぬいぐるみ片手に言ってしまえばいいんじゃない。」
「糞すらカワイイ部類に入れてもらえるんだから、世の中の僕らおじさんたちも、かわいがってほしいもんだよね。」
「クソジジィめ!なんて、裏で毒づかれる前に、カワイイ認定してほしいです。」
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