ザ・ダイラ
第81話 特殊消滅作家になる日
「ダイラさん!僕、ドント・ルック・アップとグリーンランド~地球最後の二日間~の2本を立て続けに観ました。」
「地球に隕石が衝突し、世界が一瞬で消滅する最近の映画だね。」
「ネタばれに気を使って、映画の内容の話はしませんが、確実に消滅する現実を目の当たりにした人間の行動に、とても興味をもちました。」
「どちらの話でも、共通する文脈がいくつかあるよね。」
「隕石が衝突し世界が終わる現実を受け入れられない人、さらりと諦め、隕石が衝突する瞬間まで普通に暮らす人、酒やドラッグで気を紛らわせる人、選民として国家から選ばれ、自分だけシェルターに移動する人、宇宙船に乗り込み冷凍睡眠して、他の星に行っちゃう大富豪。人種や社会的地位が最後まで付きまとう表現はきついかな~。これ以上は言えませんね。」
「クワヤマダくん!大分、言ったね。これから観る人もいるんだから、気をつけてよ。」
「ダイラさんは、あと二日で地球が消滅すると分かったらどうしますか?」
「それは、特殊消滅作家として、腕を振るうさ!」
「特殊照明作家からの!?」
「ははは!そこら中の家や公共施設に特殊照明を設置する。過去の作品も蔵から出して、ドームを突き抜けたプラネタリウム展を開くよ。オレは照明を担いで暴れ回る!」
「アーティストはそうでなくちゃね!タイタニックでも、沈没する瞬間まで演奏していた人たちがいましたよね。」
「ドント・ルック・アップに出演していたデカプリオはタイタニックのデカプリオとは別人!そこも見どころに一つ。デカプリオはいい味出してる。」
「確かに、デカプリオとは誰も気付かないですよね。」
「実際に、そんな恐怖が目の前に来たわけじゃないから、想像することは難しいけど、人間のできることって、限りがあるからなぁ。」
「国家から、地下シェルターか、別の星へどうぞっていう、話が来たらどうします?」
「興味はあるけど、地下はちょっと苦手かな。地下アイドルには興味があるけど。数十年太陽が見えないのはきっつい。」
「僕は他の惑星に行ってみたいです。」
「クワヤマダくん、ドント・ルック・アップの結末観たでしょ。あれは、ヤバい。地下も他の惑星も微妙だ。何で他の星に行きたがるの?」
「二日後に隕石が衝突するみたいだから、クワヤマダくん、手伝いに来て!ってダイラさん絶対に言うでしょ!」
「いいじゃん!クワヤマダくんの作品も一緒に展示するからさ~。そうだ、一層のこと、ムサビに乗り込もうよ。学生もたくさんいるし、最期の展示会をムサビでやればいいじゃん。」
「それは、やめた方がイイっす!絶対に揉めて終わりますもん。」
「図書館前の展示スペースで過去に何度、血みどろの喧嘩をみたことやら。」
「格闘家兼現代アーティストのコウジくんを呼べばいいよ。誰も何も言えないだろ。」
「そういうときに限って、天然で突き抜けた草間ヤヨイ風の女子が、意味不明な作品を持ってきて、謎の主張をすると思うんです。分厚い詩集を抱えて、愛はとこしえって歌い出しますよ。」
「それは、さすがのコウジくんも敵わないかな。」
「でも、そんな混沌とした中で、隕石の爆風に吹き飛ばされたら、それはそれで・・。」
「人生の中で一番輝いていたのはムサビ時代、とは思いたくない人は多いと思うけど、そんな場所で星になるのも、一つの選択肢かもよ。」
「卒業後、アーティストを辞めた人が星の数ほどいますもんね。」
「人生で一番輝いていたシーンや場所は人それぞれ、隕石が衝突する前にリストアップして、いざと言うときに、そこに集まれることが、一つの理想だね。」
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