第76話 メタバース信者の行方①

「せんぱ~い!ダイラ物語の作者と最近、連絡が取れないんですけど。内容が滅茶苦茶だから、ちょっとアドバイスしたいんだけどなぁ。」


「あぁ、多分メタバースだね。」


「そう言えば、メタバース最高っす!って言ってたなぁ。」


「オレの知り合いでもメタバースから戻れなくなった奴がいる。」


「そんなに楽しんですか?」


「一昔前、マジメな若者たちが新興宗教にハマっただろ。」


「ありましたね。僕は彫刻教ですけど。」


「現実世界の物欲だけでは満たされない精神的なものを追いかけて、ハマりこんでいくんだ。」


「メタバース教ですか?」


「要は、仮面武道会なんだよ。理想的なアバター(自分の分身)をつくって、現実の自分の容姿を考えたらやらなそうな言動で振舞うことができるんだよね。」


「この作者は、デタラメなこと言って、遊んでいそうです。」


「オレは、この作者は、その内、飽きて帰ってくる気がするんだ。」


「集中力が持たないとか?」


「やっぱり、元彫刻科は、触覚や臭いがないとダメなんだよね。」


「仮想空間には手触りがないっす!頭を使うより、手触り感を求めるのが彫刻科です!」


「どこかの美大予備校の彫刻コースの呼び込みチラシに、!暑い夏は体力で基礎力をつけよう!って書いてあったくらいだもの。」


「体育会系の部活のノリですやん!」


「彫刻科には、元運動部や武闘家が多いんだよね。クワヤマダくんだって、武闘家だろ。」


「僕は、レスリング部です。この上腕二頭筋はその頃から維持しています。」


「彫刻科じゃないけど、武蔵野の鉄人のコウジくんも、現代アーティスト活動と同時進行で、総合格闘家をやっている。ロサンゼルスのストリートでガチで闘っていたの人だ。」


「あの人はやべーっす。大学時代には空手で最優秀選手になったり、たけちゃんの誰でもピカソで6連続チャンピオンになったり。」


「やっぱり、身体を使うことが好きな連中が、多いんだよなぁ。」


「この作者だって、サッカーバカでしょ。老体にムチ打って社会人リーグで今だに走っているらしいよ。」


「元、国体の選手や、相撲部所属なんて奴もいましたね。」


「ダイラさんの上腕二頭筋も異常に発達してますもんね。」


「オレは演劇部だったけど、腕立て伏せは無限にできるよ。粘土や鉄、木や石の素材の手触り感は、実はアーティストの生命線なんだよなぁ。触覚から脳が動き出すんだよね~」


「あと、臭いが無いのも、逆に耐えられない。」


「鉄を溶接するときに出る臭いや、FRPつくるときに出る毒の臭い、木や石の何とも言えない癒しの臭い、アトリエの隅で腐っている奴の臭い、新歓コンパで日本酒とゲロとタバコと何かが焦げた臭い・・。」


「創作のヒントが臭いに込められている。」


「メタバースにはないんだよね。それが・・。」







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