第74話 価値爆上がりアート

「最近、NFTアートの盛り上がりが加速しているよね。」


「ダイラ先生、NFTが今一分からないですけど。」


「ブロックチェーンを使ったデジタル資産の一種だよ。」


「ブロックチェーンが分からない~」


「ブロックチェーンは、簡単に言うとアート(資産)の所有権が複製されたり、紛失することがほぼない技術なんだ。作品の所有権や文脈、ストーリー性を欲しがる人たちにとっては、安全性と信頼性が高い。購入したアートの権利がブロック状に積み上がり、チェーンで強固に縛られているイメージ。ブロックが急に2段上のブロックに移動したりすることはまずないでしょ。」


「そして、高額なNFTアートを購入した瞬間に、その人も作品のストーリーの一部になれるし、社会的な信頼度も一気に上がるし、作品の価値によっては大富豪たちのメンバー入りもできるんだ。」


「いや~な世界だわ!バスキアを売買した前澤さんもそのたぐい?」


「バスキアを購入した人物の、アートへの造詣的なセンスも見られているんだよ。」


「どこかのオジサンが、数十年かけて制作したデザインやデジタル画像、数百枚を75億円で買われたというニュースを見たわ。」


「ピープル氏でしょ。あれは、NFTアート市場最高額だね。デュシャンのだって、ただの便器だろ、でも今となっては、現代アートの文脈の中で凄いことになっている。ピープル氏の作品もそんなNFTアートの先駆者としての文脈に価値がついたんだ。」


「その価値を買うことが、富豪たちのステイタスってこと?」


「大昔から、偉い人は金銀財宝や文化的価値のあるものを集めたでしょ。宝物の多さや文化的価値観を所有することが、偉大さを象徴する。それが現代はデジタル化されたと考えれば、分かりやすいかな。」


「ダイラ先生!分かってきました。デジタル化すれば、倉庫がいらないですもんね!」


「そうそう、でかい作品は管理が大変!気持ち分かる?」


「大きな彫刻や立体もNFTアートになるんですか?」


「デジタルにしたものであれば、権利は所有できるよ。最近は、作品を観ず、値段だけで購入する輩もいるから、株の売買と似てきていることも否めない。」


「所有欲も満たされるし、安全性も担保されている、場所もいらない、そして、社会的な好感度も爆上がり。こんないい話はないですね。遠い世界の話のように聞こえるけど、私が描いたこんな落書きだって、NFTアートとして、世界の誰かが高額で購入する可能性だってあるんでしょ。」


「小学生が描いた落書きを高額で取引する人たちだっているみたいだよ。」


「アートで生計を立てることが身近になったと思えば、許せるかな。」


「今まで、仲介にゴッソリと持っていかれた分、直接売買できるからね。形態としては、路上販売と似ている。デジタル版路上販売ってとこでどうだろう。」


「よし、一枚絵を描く前に、NFTアートについて、少し勉強してみようかな。」


「一枚描くのに数百時間かけるんだから、数時間NFTの勉強に時間をかけてもいいかもね。それで、未来が拓けるかもしれないから。」














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