第73話 バーバーパパの綿あめ
「バーバーパパの絵本を読んだことある?」
「あるわよ。庭からバーバーパパは生れたんだよね。バーバトリックで様々な形に変化する。ママが白い種みたいなものを土の中に埋めたら、色とりどりの7人の子どもたちが土から出てきた。私は、アーティストのモジャが好きだなぁ。」
「作者はアメリカ人とフランス人のパートナーなんだけど、フランスの公園で、子どもがパパに、バーバー(綿あめ)パパとせがむ様子から、インスピレーションを受けたようだよ。バルバというフランス語の発音を、バーバーと聞き間違えたのが、名前の由来みたい。」
「バルバパパもいいかもね。ダイラさんの作品もモコモコしていて、綿あめみたい!」
「君にはそう見えるんだね。この絵本は、日本でも大ブレイクしたけど、現代アーティストにも影響を与えていると思うよ。」
「庭から生まれるってとこが、サイエンス・バイオアート?」
「亡くなった人のDNAを桜の樹木のDNAに保存した福原志保さんのアートは、バーバーパパと共通するところがある。」
「桜が咲く頃に、大切な人を想い出し和む。」
「人間の形でいることは現代では有限だから、それなら、DNAという情報だけを、永遠なるものに組み込む。」
「変化した形で、その人と再び巡り合う。」
「バーバー一家だね。」
「いずれ滅びるかもしれないホモサピエンスの最後の創造行為かもしれない。」
「ダイラさん、そもそも、なぜ人間は人間を残そうとしたがるんだろう。」
「本能であると言ってしまえば簡単だけど、人間の創造行為には何かしらの価値があると思っているからじゃないかなぁ。」
「う~ん。難しいSF的な話になるなら、退場します。」
「分かりやすい例で言うと、アーティストが典型的だ。奥さんに粗大ゴミの日に作品をこっそり出されていることにも気付かず、ワシの作品はとこしえじゃと唸っている作家は世界中にたくさんいるでしょ。」
「私の知り合いにも、気付いたら、倉庫の作品が半分に減っていたという人がいたわ!」
「私が苦労して創造したものに意味が無いわけないだろう。って考えることって、人類の進化の名残なんじゃないかなぁ。創造行為を積み上げること自体が人間らしさであって、それ以上でも以下でもない。そういう生き物なんだろうか。だから、自分という一つのパズルの存在価値を持ちたがる。」
「では、福原さんの作品みたいに、DNAを様々な物質に組み込むことが、人類最大の創造行為ということになれば、皆そうする?」
「デジタルの世界にも、自分の情報を組み込み始めている人たちが現れているね。」
「身体を持たないホモサピエンスの在り方がブームとなる日も近いかも。」
「みうらじゅんで言う、マイDNAブームって感じかな?君はどこに自分のDNAを組み込みたい?」
「綿あめかなぁ。」
「人類は、地球上の動植物のDNAを体内に日々取り込んでいいるから、何かしらの形で地球に還元するって発想なの?」
「そこまで考えていなかった。ただ、私はいずれ、綿あめになるのって言えたら、自由な人生が歩めそうだと思ったから。」
「おれは、DNAは光源にまぶしてほしいかな。情報はFBに大量に保存しているけどね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます