ダイラノカシラ
第71話 デジタル・ビックバン
「ダイラ先生~、私、アナログ人間なので、最近のデジタルの進化についていけません!」
「昭和生まれの人がよく言うセリフだね。あなたは昭和?」
「そういうダイラさんだって、バリバリの昭和っ子でしょ!」
「昭和40年生まれです。僕は、デジタルは得意だよ。そもそも、アナログの方が厄介なんだけどなぁ~。」
「どうして?」
「だって、アナログ時計を見たら分かるけど、情報量が半端なく多いでしょ。時刻を伝えるだけのものであるはずなのに、1~12の数字と長針・短針・秒針がそれぞれ違うタイミングで動き続ける。そして、その時計を覆うデザインのやまかしさといったら、もしもアナログ時計が壊滅した未来人が見たら、何の道具が予想もつかない代物となる。」
「デジタル時計は、シンプルに時刻だけを伝える。」
「デジタル化は、生活をよりシンプルにする発明だと思うんだ。あなたは、そのシンプルさについていけないってことなの?」
「そう言われると、理解できるんですが、アートの分野では、デジタルが故に表現が複雑になっているものもあると思うんです。う~ん、例えば、チームラボの作品とか?」
「日本を代表するアーティスト集団だ。デジタルを駆使した、総合芸術だね。何を表現しているかというコンセプトより、体感型、感覚型重視のアートだから。鑑賞者は、シンプルに楽しい、気持ちいい、不思議だが言えればいいんじゃない。デジタルを複雑に生かしながら、五感にシンプルな刺激を与える装置って考えればどうかな。」
「ダイラさんの作品はデジタルなんですか?」
「う~ん。デジタル思考から生み出された昭和SFファンタジーだね。」
「新旧を跨いでる感があって、カックイイ!」
「ちなみにデジタルの元祖は、河原温じゃないかなぁ。パネルに、24時間かけて、日付をアクリル絵の具で描いた人。手法はアナログだけど、思考はデジタルだよね。」
「宮島達男のLEDを使ったデス・シリーズもデジタルアートのレガシーですか?」
「0以外の数字がランダムに表示される様は、何かを意味しているんじゃないかと、鑑賞側が考えてしまう。シンプルが故に複雑さをまとっている。デジタルは0と1で成り立つけど、あえて0を表さないところが、オツだね。河原温のメッセージと共通するものがある。」
「デジタルは深いところで繋がっている。最近、気になっている作家で、TYM344とう人で、ミレーの落ち穂摘みを記号のように表現している。」
「関根伸夫の位相ー大地も記号化している人?」
「ものでいいじゃんと言っていたモノ派を超える記号派だね。」
「日本中の道路標識からインスパイアされたらしいです。」
「まぁ、どっちも言いたいことは、深いところでは同じだってことが分かった気がします。」
「複雑なものはシンプルに、シンプルなものは複雑に捉えようとする、人間の本能的な処理能力を生かして遊んでいると思えば、楽しめるかもね。」
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