第68話 芸は身を吸収する?

「ダイラさんにコラボしてほしいアーティストがいる。」


「誰?」


「フンデルト・ワッサー」


「糞出ると?わっさ~?」


「放牧感がある名前やね。フンデルト・ヴァッサーとも言う、オーストリアの画家、建築家よ。」


「ワッサーさんが何でダイラさんとコラボするの?」


「大阪にある、舞洲工場の煙突しらん?」


「あぁ、カラフルな建物の両サイドにそびえたつヤバイ?」


「あれは煙突なんよ。あの先端の形態を、ダイラさんのコンタクトドームにしてほしい。」


「そうだね、あの先から、夕暮れ時に光がこぼれたら、感動的なシチュエーションになるね。」


「絶対にカップルが集まる名所になるはずやわ。」


「あの形態や、カラフルな建物は何を意味しているの?」


「ワッサーはんは、SDGsの先駆者、自然界には直線なんか無い!人間は自然と調和するべきだ!を大分昔からゆーていた人。奇妙な形態をした建築物はカビらしいんよ。」


「もしかして、風の谷のナウシカの腐海のモデルになっているんじゃない?」


「充分あり得る。三鷹にあるジブリ美術館はワッサー仕様らしい。駿はんが、見逃すわけないアーティストの一人だわ。」


「ダイラさんの作品も、そう考えると、腐海にあっても違和感がない。」


「腐海の片隅で、光を放ってそうやわ。」


「フンデルトワッサーとダイラさんとの思わぬ共通項が見えてきた。」


な制作をしているところも似てる。やっぱ、コラボや!」


「ワッサーさんは、ガウディの建築とも似てますよね。」


「そうなんよ。二人といい仕事している。けど、その二人には何とも言い難い共通点もある。どうも、自然派のアーティストは、身なりに気を使わない傾向がある。ガウディの最期は路面電車に轢かれて亡くなるんやが、そのときに着ていた服装によりホームレスと間違われて、治療が遅れたんや。」


「身寄りのない、浮浪者扱いされてしまうなんて、悲しい時代ですね。」


「ワッサーはんの服装も、かなりのだったらしい。」


「服装のセンスは人生の中で影響を受けているものが出やすいからね。」


「ダイラさんも、好きな映画の影響がもろに出ているやろ。」


「インディージョーズのハリソンフォードですか!?」


「今度、本人に確認しよ。」


「芸は身を助けるということわざは、アーティストにとって入口かもしれないけど、世界的アーティストの晩年を見ると、そうでもなさそう。」


「芸(アート)により、身を立てるところまでは、ているんやが、どうも芸にされていく傾向がある。芸に自分を合わせる、芸との整合性を保とうとする。」


「特に世に出ると、そうなる傾向にある。作品と作者の生き方が乖離かいりしないことを、世間が求め過ぎなん。それは、苦しいと思うよ。」


「草間彌生さんは平気そうですけどね。」


「草間はんは特例や。」


「バンクシーみたいに、正体を明かさないというブランディングもこれからのアート界には必要なのかもしれない。」


「写楽の正体が丁稚坊主だったら、叩かれそうですもんね。」


「そう考えると、実は、ダイラさんをプロデュースしている黒幕がいるって考えたら、ミステリアスやわ。」


「プラネタリウムシリーズを構想したのは、実は奥さんだったとか!」


「勝手に想像するのは、今日はここまでにしとこ。」





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