第64話「シュールだね」の本当の意味
「ダイラ君!私、講評会で、また、君の作風はシュールだねと言われちゃったよ。」
「あの、サザエのような抽象形態?シェルだねと言われたんじゃないの?」
「あれは、爆発を意味している形なんだけどなぁ。貝じゃない。」
「でも、シュールだねって、日常会話にもよく出てくるよなぁ。」
「私の肌感覚で言うと、感想に困った人が使う
「そもそも、シュールとは、ダリやマグリットの表現に見られる、シュールレアリスム(超現実主義)のことだろ。」
「簡単に言うと、日常的でないということ。」
「君の髪形シュールだよね。」
「ダイラ君!バカにしている!」
「現代では、言われて少し腹が立つワードになっているけど、どうやら天才サルバドール・ダリにとっては、シュールこそ我であると願っていたようだよ。」
★
「ダリは若い頃、シュールレアリスムを謳う、詩人や画家たちの集まりに若きスター候補として参加していた。そこで、仲間の詩人の奥さん、ガラを略奪し、アメリカに渡った。」
「その話、聞いたことある。そのガラのお手
「ガラは有能なアートプロデューサーだったんだ、元旦那は詩人で売れる見込みがなかったから、金の卵ダリに乗り換えた説が有力だよ。BLで妹好き、シャイでコミュ障だったダリにとっては、才能を開花させる素晴らしい出会いだったみたい。」
「ダリは凄まじい器用さで、印象派やキュビスムなど、何でもこなす天才だったかわりに、何が自分の表現なのか彷徨うタイプだった。器用貧乏。ガラに出会ってからは、シュールレアリスムのスターとして、描く題材や服装や言動にまで、ガラは言及していたらしい。」
「あのくねっとした独特な髭も、ガラのプロデュース?」
「有名な記憶の固執という作品は、当時のダリを表している。中央に横たわっているまつ毛のある物体はダリそのもの。ガラの毛布に包まれ安心している様だと言われている。歪んだ時計は、ガラとの素晴らしい時間を止めたいというメタファーと、アインシュタインの相対性理論、時間が歪む発想を取り入れたんだ。」
「カマンベールチーズが溶ける様とガラに対するトロトロに溶けた思いも込められているとも言われているよね。」
「成功者には必ず嫉妬する人間が現れる。」
「アメリカで相当儲けたらしいよね。」
「ダリの絵はシュールレアリスムではないと、最初に所属していた仲間たちから訴えられるんだ。」
「シュールレアリスムは元々オートマチック技法(偶然生まれた形や色から発想を広げる手法)を使う。ダリの絵は、計算されて描かれたものであり、シュールではない、という主張だった。」
「我こそはシュールであると謳っていたダリは困惑するんだ。シュールと言われなくなったダリは落ち込み、ガラに先立たれ、晩年は鳥ガラのようになってしまったようだよ。」
「シュールだねを一番欲していたのは、実はダリ本人だったんだ!」
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