第63話 新説・鳥獣人物戯画の謎

「せんぱ~い。東京国立博物館でやっていた鳥獣人物戯画展、行きました?」


「行ったよ。44mは圧巻だった。鳥獣人物戯画と言えば、カエルとうさぎの相撲や、猿とうさぎの水浴び、猿の念仏の場面が有名だろ。今回、初めて、甲・乙・丙・丁と呼ばれる全4巻を見たんだけど、あれは、動物(空想動物)図鑑を装っただね。」


「高山寺を開いた明恵上人みょうえしょうにんは、変わったお坊さんとして有名です。」


天竺てんじく(インド)に行って派手に悟ろうと、色々と画策したけど、実現せず、もう面倒臭いと、自分の耳を切って、自宅で悟った人でしょ。」


「一人飛び級、ワープマニアですよね。」


「たまにそういう人いるんだよね。自由に飛んじゃう人。」


「明恵上人は信仰DJ説もあります。」


「当時のお坊さんにしては珍しく、マイナー・メジャー関係なく世界中の数々の宗教を取り入れていたらしいよね。」


「やっぱり、ぶっ飛んでいますね!」


「鳥獣人物戯画は宗教の変奏曲だと思うよ。ミックスアレンジし過ぎて、後世の人たちは解読できない。だって、みうらじゅんの800冊に及ぶエロコラージュだって、数千年後の人間が解読できると思う?」


「明恵上人は夢日記も50年間書き続けていたとか。」


「あぁ、夢日記を書く人は・・横尾忠則も書いていたよなぁ。」


「横尾さんも、飛んでいますよね。模写を繰り返し過ぎて、オリジナルになった人ですもんね。」


「模写とお経は似ている。毎日同じことを繰り返し過ぎると、ぶっ飛ぶんだよ。」


「耳切りと言えば、ゴッホです。」


「自分が描いた耳の形がおかしいと指摘されて、自分の耳を切る人はいないよね。」


「彼も一人飛び級タイプだね。5倍速で人生を進めて悟ろうとする。せっかちさん。」


「耳を彫刻した三木富雄さんはどんなタイプですか。」


「人をタイプで分けるのは止めておこう。三木さんの耳は自分の耳を切って彫刻したわけじゃないからね。一人飛び級ではないな。」


「でも、耳に固執するということは、耳には何かあるんですかね。」


「身体の中でも感度が高い場所だからね。情報を吸い込むブラックホール、宇宙との繋がりを意識するんじゃないかな。」


「ダイラさんも、作品動画編集の時には、音にはこだわっていますもんね。」


「映画でも、音響が命だからね。耳を切ったり、作ったりする人は、自分の人生のためだけの音響が聴きたかったんじゃないかなぁ。」


「雑音を排除したかった。」


「そういう思いからの行動かもね。」


「僕も、雑音は苦手です。好きな映画音楽を聴いて浸っているときが一番幸せ。」


「鳥獣人物戯画に話を戻すけど、絵の中に出てくる者から発せられる効果音などの音を当てたら、今までとは違う解釈が生まれる気がするんだよな。ジャンルはヘビメタだったとか。」


「あの巻物の長さはヘビをメタファー?」


「ないな。」


「ダイラ新説、鳥獣人物戯画の謎に迫る!ですね。」








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