第62話 さよならアンディ
「布袋寅泰のさよならアンディ・ウォーホルという曲を聴いてから、現代アーティスト、アンディ・ウォーホルの存在を知った若者も多いんじゃないかなぁ。」
「背徳のブルージーン プラネタリウムの星もG線上 、このフレーズはアンディの最後を言い表している。」
「もしかして、ダイラ先生のプラネタリウムもアンディへのオマージュが込められていたりして。」
「あの辺の星はG線上なんだよ。なんて。」
「そもそもG線上はバイオリンの一番低い弦のみで演奏する、バッハのG線上のアリアが有名だよね。」
「サザンオールスターズの〇〇ピーのGスポットも有名ですよね。」
「そのGとは違うかな。」
「私は、アンディの最後というより、停滞を言い表しているような気がしている。晩年は停滞して苦しんだみたいだよ。」
「G線上は悲しい音階だものね。苦しいときに聴くとぐっとくる。」
「アンディと言えば、バスキアの存在が欠かせない。バスキアの若者からの人気や、子どもの落書きのような絵に惹かれ、繋がりをもった。」
「私が不思議に感じるのは、アート界のスーパースターはなぜ、人生の最後の方でプリミティブを求めるのかよ。」
「ピカソのアフリカ芸術、岡本太郎の縄文土器、アンディのバスキア依存。」
「一説には、幼い頃から、大人びた絵しか描けなかった反動で、根源的な表現を求めると聞いたことがある。」
「北野武がよく言っていた、振り子の原理?」
「それに近いかもね。誰とも話さなかった無表情の秀才が、お笑い芸人になったり、ヤクザが弁護士になったり・・。」
「結局は、本能的に人生のバランスを取りたがるんだよ。傍からみたら、突き抜けたままで偏ったままでいいじゃないかと思うんだけど、スターも人間、それだけでは生きられないんだと思うよ。」
「草間彌生は、突き抜けたままですよね。」
「女性アーティストは割と突き抜けたままの人が多い。別れた相手にグジュグジュと未練をもち続けるのは男性が多いけど、女性はスパッと過去を切り捨てるじゃん。そこが、女性の強さでもあるし、突き抜けられる要素でもあるんじゃないかな。」
「そう言えば、彫刻科の学生が、芸祭の後から、デザイン科の人と付き合うことがたまにありますよね。
「あれは、デザイン科の学生が彫刻科に
「やっぱり男神輿ですか?」
「プリミティブだろ。あれは。」
「人生は結局、美女と野獣なんだよ。その二つが補完し合って、精神の安定が保たれるんだよ。」
「でも、彫刻科の学生は、男神輿のときはプリミティブに装いますけど、普段はただのシャイボーイなので、見捨てられる速さも抜群ですよね。」
「男神輿のスタイルで、ハッタリでもしばらく過ごすことも大切なんだろうなぁ。」
「私の聞いたところによると、アンドウ君も早々に振られたみたいだよ。」
「さよならアンドウってね。」
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